第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム1(I-SY1)
動脈スイッチ手術における成績向上のための術式の工夫

2024年7月11日(木) 14:50 〜 16:20 第1会場 (3F メインホール)

座長:小沼 武司(長野県立こども病院)
座長:中野 俊秀(福岡市立こども病院 心臓血管外科)

[I-SY1-5] 成績安定のための自施設の動脈スイッチ手術の方針と基本 -連続100例の経験から-

櫻井 一1,2, 大橋 直樹1,3, 六鹿 雅登1, 野中 利通2, 櫻井 寛久2, 大河 秀行2, 和田 侑星2, 石田 真一2, 加藤 葵2, 前野 元樹2, 西川 浩3 (1.名古屋大学医学部附属病院 小児循環器センター, 2.JCHO中京病院 心臓血管外科, 3.JCHO中京病院 小児循環器科)

キーワード:動脈スイッチ手術, 完全大血管転位症, Jatene手術

【目的】成績安定のため様々な変遷を経て標準化してきた動脈スイッチ手術(ASO)の基本術式と,冠動脈形態や大血管の位置関係など各症例のバリエーションに対する対応の基本方針を示し成績も検証した.【方法】現在までの約16年間のTGAやTGA型DORVに対する連続100例の乳児ASOを対象とした.うちTGA I 62,TGA II 26,DORV 12例で,CoA/IAA合併7/3例で,冠動脈はShaher 1: 61, 2a: 12,5a: 7,その他: 20例だった.先行手術はPAB 5例,arch repair 2例,BTS 1例に行っていた.基本は送脱血管挿入前の自然な位置で冠動脈を確認し予定冠動脈移植部位にマーキングをしておくこと, Lecompte法が原則だが大血管関係が45度よりside-by-sideに近い場合はoriginal JateneとしPA末梢断端吻合口を右にずらして再建し冠動脈の圧迫を回避すること,CoA/IAA合併例は原則一期的修復を行うが心停止時間短縮のため弓部再建は心拍動下に行うことなどである.【結果】手術時日齢6 [4-6]日,体重3.0 [2.7-3.3] kg (中央値[IQR])だった.入院死亡は1例で,日齢10で一期的弓部再建とASOを行ったが術翌日敗血症となり消化管穿孔で4日後に失った.術前からのhigh flowによる腸管虚血があったと思われた.遠隔死亡は1例でShaher 5aの1例目が術後2ヵ月時に自宅でshockとなり失った.LCAのunroofingが不十分だったと思われた.術中の冠虚血eventは4例で,2例はneo PAのパッチによる延長で冠動脈圧迫をなくし,1例は冠動脈の剥離追加で屈曲を回避し,1例は5aでunroofingを追加して改善した.【結語】良好な冠循環を確立するためには心臓が自然な位置と大きさにある段階で再建後の位置を想定しその位置を再現すること,5aタイプでは交連部を越えてLCAを十分にunroofingをすること,neo Aoは長くなりすぎて後方からneo PAを圧迫しないようにすること,neo PAのパッチは余裕をもたせて冠動脈を圧迫しないようにすること,などが肝要で動画にて供覧する.