The 60th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Symposium

Symposium 2

Thu. Jul 11, 2024 8:00 AM - 9:30 AM ROOM 3 (4F 409+410)

座長:岡田 清吾(山口大学大学院医学系 研究科医学専攻 小児科学講座)
座長:濱田 洋通(千葉大学大学院医学研究院 小児病態学)

[I-SY2-3] 川崎病モデルマウスのシングルセル解析

平井 健太 (岡山大学病院 小児科)

Keywords:川崎病, シングルセル解析, 創薬

川崎病で冠動脈炎が起こる原因は、最初の報告から50年以上が経過した現在においても不明である。Candida albicans water-soluble fraction (CAWS)を用いた川崎病モデルマウスの冠動脈における病理組織像は、川崎病患者と同様に、内膜と外膜に生じた炎症が中膜に波及して汎血管炎に至る。しかし、マウスとヒトのいずれにおいても、冠動脈微小環境における免疫細胞(好中球やマクロファージなど)と非免疫細胞(血管内皮細胞や線維芽細胞など)における経時的なmRNAの発現変化や、詳細な細胞間クロストークは明らかでない。
近年、細胞1個1個の遺伝子発現を網羅的に解析するシングルセル解析(single cell RNA-seq)の手法が発展し、心臓領域でも心肥大や動脈硬化、心筋炎のモデルマウスを用いて新たな病態解明や治療ターゲットの発見に寄与している。そこで我々は、川崎病モデルマウスの心臓由来細胞を用いて、免疫グロブリン(IVIG)の有無による冠動脈炎の各時相におけるシングルセル解析を実施し、IVIG不応の難治性冠動脈炎に対する創薬標的遺伝子や治療薬候補化合物の探索を行った。
川崎病モデルマウスにおいてもヒトと同様に、冠動脈炎の初期に好中球を中心とした免疫細胞が増加し、その後に多彩な免疫細胞の集積を認めた。また免疫細胞の遺伝子発現変化に応答して、血管内皮細胞などの非免疫細胞においてもmRNAの発現変化を認め、その炎症カスケードをエンリッチメント解析で確認した。さらに、川崎病モデルマウス由来細胞の遺伝子発現プロファイルを機械学習し、細胞に4万種類の低分子化合物を添加した際の応答遺伝子発現プロファイルと比較することで、IVIG不応の炎症カスケードに対する川崎病の新規治療薬候補化合物を複数同定した。
本講演では、川崎病モデルマウスを用いたシングルセル解析の具体的な方法や、遺伝子発現の初期解析結果、AI薬効予測による川崎病の新規治療薬候補の探索法につき紹介する。