[II-CPD4-1] 麻酔科医からみた処置時の鎮静鎮痛と医療安全
キーワード:鎮静, PSA, 全身麻酔
ここでは検査や処置時の鎮静鎮痛(Procedural sedation and analgesia, 以下PSA)について、その概要といくつかの自経例を提示する。当院では小児心臓カテーテル検査は、全身麻酔下に不動化を得て調節呼吸でEtCO2とFiO2を制御し、血圧維持に配慮しつつ麻酔科医が担当している。一方の手術室外PSAは、各科管理で麻酔科の関与は一部に限られる。一般に全身麻酔では主に麻酔科医が手術室で患者管理に専従し、目的に応じて鎮静(健忘)、鎮痛、筋弛緩が誘導されるが、モニタリング下に安全性は高く管理できる。PSAにおいては、鎮静レベルの変動や体動がみられ、自発呼吸と自然気道を維持しながら気道閉塞や低換気の合併症に注意した継続的な監視とモニタリングが必要であるが、その応用が難しい場合も少なくない。PSAは実施場所、薬剤と投与経路、担当者、絶飲食指示、気道管理方法やモニタリング、緊急時対応など、その管理体制は施設毎に異なる部分が多い。意識状態から見る鎮静のレベルは、PSAと全身麻酔との境界は曖昧かつ連続的で容易に深い鎮静状態へ移行し、適切な管理下になければ気道閉塞や低換気から重篤な合併症を招く危険性を伴う。また浅い鎮静状態では目的とする検査や処置を完遂できない。有効なPSAには薬剤の具体的な使い方と担当医のスキルセット向上は実務上必要であるが、それ以上に重要なことは合併症に焦点を合わせた事前チェック、説明と同意、患者観察とモニタリング、終了後ケアと覚醒確認、記録、バックアップなどの施設毎の体制整備であると、米国小児科学会のPSAガイドラインなどでも指摘されてきた。日本では人材や費用の点からこれらの実施が現実的に難しい場合もあるが、改善の余地があるものと推察される。小児のPSAにおいては、関係者からの問題意識の共有と安全に配慮した組織的な体制の整備が広く安全性の向上に寄与するものと考える。