[II-JS-2] Fontan手術に発症する原発性肝癌に対する肝切除
Keywords:原発性肝癌, 肝切除, Fontan手術
近年、Fontan手術をはじめとした先天性心疾患術後の長期予後の改善に伴い、術後の中心静脈圧の上昇から生じるうっ血肝により、慢性肝障害や肝線維化、原発性肝癌を発症することが現在問題となっている。しかし、心臓術後の肝障害に関する明確なガイドラインはまだ定められていない。今回、当院において、Fontan手術後のうっ血肝に起因する原発性初発肝癌に対して、外科的治療を施行した5例を経験したので、文献的考察を踏まえて報告する。年齢の中央値は32歳(22-43歳)、Fontan手術後から肝癌発症までの中央値が25年(18-28年)、2例がワーファリンを内服していた。術前の中心静脈圧は、18.0 mmHg(7-20 mmHg)と高値であった。AFP中央値は2693ng/ml (52-10428 ng/ml)、3例が多発症例であった。術中出血量は中央値1181 ml (150-2850 ml)であり、うっ血による易出血性の状態であった。病理結果は、肝細胞癌3例、肝細胞癌と混合型肝癌の併発が2例であった。背景肝の線維化の程度は、F3 が4例、F4が1例であった。2例で再発を認め、1例は薬物療法後に転移病変切除を行い、1例は肝内単発であり、ロボット支援肝部分切除術を施行した。先天性心疾患術後において、長期間にわたる肝臓の定期的な腫瘍マーカーや画像のフォローが行われていない症例では、原発性肝癌が進行した状態で発見されることがあり、予後規定因子となり得る。今後、先天性心疾患術後の予後が更に改善することで、うっ血肝からの原発性肝癌の発症症例は増加することが予想されるため、そのことを念頭に置いたフォローが重要である。