[II-JS-3] フォンタン関連肝障害における運動負荷心臓カテーテル検査を用いた血行動態指標の特徴
キーワード:FALD, CPX, exercise
【背景】フォンタン関連肝障害(FALD)の発症機序として高い中心静脈圧による肝うっ血が関与するとされているが、病態は未だ不明である。一方、運動負荷心カテ検査は血行動態の変化を把える上で非常に有用だが、フォンタン循環で検討された報告は少ない。【目的】FALDを呈したフォンタン患者での運動負荷時の血行動態指標の特徴を明らかにする。【方法】運動負荷心カテ検査を施行したフォンタン患者7例を対象とした単施設後方視的観察研究。呼気ガス分析装置にて酸素消費量を連続測定しながら臥位エルゴメーターによる運動負荷を行った。FALDの定義はGd-EOB-DTPA MRI検査または造影CT検査により肝臓に何らかの異常所見を認めるものとした。【結果】検査時年齢は13.3歳(10-17歳)。全例FALDと診断、画像所見の内訳は肝辺縁鈍化3例、肝実質モザイク所見(Frog-spawn appearance)3例、過形成結節1例で、肝硬変例、肝癌例はいなかった。安静時の肺血流量(Qp)、体血流量(Qs)は各々2.7±0.6、3.0±0.6 L/min/m2に対して運動負荷時は4.3±0.9、4.7±1.1 L/min/m2に増加した。安静時の平均肺動脈圧(mean PAP)、肺動脈楔入圧は各々11±1、7±1mmHgだったが、運動負荷時はともに19±3、14±3 mmHgと著明に上昇した。更に、肺血管予備能の指標であるΔmean PAP/ΔQp(Qp増加分に対するmean PAPの上昇率)が、5.2±2.2mmHg/L×minと高値であった(正常値 <3.0 mmHg/L×min:Egbe AC. et al. J Am Coll Cardiol. 2020)。特に過形成結節例では9.0mmHg/L×minと非常に高かった。【結語】FALDを呈したフォンタン患者では運動による静脈圧上昇が著しく、肺血管予備能の低下が関与している可能性が示唆された。