[II-OR15-03] 幼児期に施行した心房中隔欠損閉鎖術が発育に与える影響
キーワード:心房中隔欠損, 手術, 発育
【緒言】和歌山県には心房中隔欠損(ASD)に対するカテーテル治療の認定施設が存在せず、乳児期~幼児期早期に診断されたASDについてはカテーテル治療が可能な体格になるまで発育するのを待たずに外科的な閉鎖術を希望する家族が多いため、幼児期に閉鎖術を行っているのが現状である。幼児期閉鎖術の是非について発育の面から検討した。【目的】幼児期に施行したASD閉鎖術が児の発育に与える影響について検討する。【対象】当院で心臓カテーテル検査ならびにASD閉鎖術を1~6歳時に施行し、部分肺静脈還流異常などの合併がなく、かつ21トリソミーやNoonan症候群などの基礎疾患を有する症例を除外した27例(男児10例、女児17例)。【方法】手術時、術後6か月、術後12か月の身長と体重を診療録から確認しBMIも算出、2000年に厚生労働省が報告した乳幼児身体発育調査報告書を元に身長・体重・BMIの月齢におけるZスコアを算出した。それらの術前術後における推移、更には術前のそれらと心臓カテーテル検査で算出した肺体血流比(Qp/Qs)の相関を統計学的に検討した。統計については反復一元配置分散分析を行い、多重比較はTukeyの方法を用いた。【結果】手術時年齢は3歳6か月±12か月でQp/Qsは2.46±0.5であった。身長・体重・BMIのいずれも手術時と12か月後でZスコアに統計学的有意差を認め、身長においては6か月後と12か月後、体重においては手術時と6か月後においても有意差を認めた。また術前のQp/QsとBMIについては弱いながらも有意な負の相関を認めた。【考察】術前のQp/Qsが高値であるほどBMIが低い、つまり痩せ傾向にあることが確認され、閉鎖術を施行することにより身長・体重・BMIのいずれもZスコアが上昇、つまり「発育が良くなる」ことが示された。幼児期のASD閉鎖術は発育を改善させるという点で有意義である。