[II-OR15-05] 先天性心疾患術後遠隔期における心電図P波高/右房面積と心房性不整脈発症との関連
キーワード:心房性不整脈, 成人先天性心疾患, 心電図
【背景】心房頻脈性不整脈(ATA)は成人先天性心疾患(ACHD)の長期合併症であり、右心系異常を持つ患者に合併しやすく予後不良因子である。【目的】右心系先天性心疾患(CHD)におけるATAの予測因子を検討すること。【対象・方法】2015年1月~2023年12月の8年間に当院ACHD外来を受診した、20歳以上の二心室修復術後の右心系CHD患者171例(TOF126例、PA/VSD17例、Ebstein9例、DORV/PS8例、critical PS7例、PA-IVS4例)を対象とした。すでにATAを発症した38例(Paf7例、AFL14例、AT17例)をATA群、発症してない133例をnon-ATA群とし、最終受診時またはATA発症1年以内の臨床所見(NYHA、BNP)、TR・PS・PRの程度、2誘導P波高、PR時間、エコー心尖部四腔像での右房面積(RAA)を比較検討した。ペースメーカー植え込み例や持続性Afは除外した。【結果】ATA群vs non-ATA群で年齢は45vs33歳(p<0.01)、女22(58%)vs66例(50%)(p=0.37)、手術時年齢は8vs2歳(p<0.01)、手術からの期間は34vs30年(p=0.76)であり、疾患の内訳に差はなかった。中等度以上のPS・PRの割合に差はなかったが、中等度以上TRが12(32%)vs11例(8.3%)(p<0.01)でATA群に多かった。RAAは17.2vs11.2cm2/m2(p<0.01)とATA群で大きかったにも関わらず、P波高は0.73vs1.08mm(p<0.01)と低電位であった。PR時間は181vs168ms(p=0.04)とATA群で延長していた。多変量解析ではP波高/RAA(OR=1.29, 95%CI:1.11-1.50)が独立したATA発症の危険因子であり、ROC分析でAUC=0.83、P波高/RAAのcut off値0.059(感度83%, 特異度74%)であった。【考察】ATAのリスク因子としてTRや右房拡大が報告されているが、右心系CHDの遠隔期にこれらの所見を呈していてもP波の低い症例が散見される。慢性的な右房拡大による右房心筋障害の進行により、拡大に見合わないP波減高をきたしていると考えられる。【結論】右心系CHD術後遠隔期において、P波高/RAAは日常診療で簡便に計測でき、ATAの予測因子として有用と考えられる。