[II-OR15-06] 当院における段階的Yasui型修復の実際と術後合併症
キーワード:Yasui手術, 大動脈弓離断, 大動脈縮窄
【背景】Yasui手術では術侵襲に加えLVOT遺残狭窄や肺動脈狭窄に起因する心不全, さらに気管(支)狭窄等の術後合併症が問題となるが, それらを緩和するため当院では新生児期の両側肺動脈バンディング術, 月齢1-2でのDKS吻合と右室-肺動脈導管を使用したNorwood型手術(Nw)を経て, 体重7-10kgを目安にVSD閉鎖と導管サイズアップによりYasui型修復を完遂する戦略をとっている.【方法】当院の段階的Yasui修復例の経過を総覧し, 術前後の留意点を把握することを目的に, 2015年以降のYasui手術実施例の診療録を後方視的に検討した. Yasui型修復の適応基準は大動脈弁輪径が65-70%N未満であることを基本とし, 個々の症例に応じて術式を決定した.【結果】対象は5症例(IAA 4例, CoA 1例), うち4例が大動脈二尖弁, 2例が右鎖骨下動脈起始異常を伴い, 初診時エコーでの大動脈弁輪径の中央値は60%N (range: 60-64%N)だった. Yasui時の月齢, 体重の中央値はそれぞれ21 (12-31), 8.6 (7.9-11.4) kgだった. 2例でNw後に肺動脈狭窄による低酸素血症のため外科的肺動脈形成および右室-肺動脈導管のサイズアップを要し, 別の2例ではYasui後に肺動脈のバルーン拡大を要した. 5例中2例でYasui後にLVOT baffleの高度狭窄を認めた. 2例とも初診時からYasui直前にかけて大動脈弁輪径が拡大しており(60→69%N, 64→78%N), 術前のCTにおいて想定されるbaffle内への漏斗部中隔の張り出しが目立つ傾向があった. 気道トラブルはすべてNw後に出現し, 反回神経麻痺を4例に(左片側 3例:全例が軽快, 両側1例:気管切開), 左気管支狭窄(無症状)を1例に認めた. 【考察】段階的Yasui修復においても肺動脈狭窄や気道トラブルは高率に発生しうる. またYasui完遂までに大動脈弁輪が育つケースがあり, 後方偏位していた漏斗部中隔が前方に変位してYasui後のLVOT baffle狭窄を招いた可能性があることから, 各段階の実施前にYasui型修復の是非を再検討する必要性がある.