[II-OR18-01] Development of a Novel Therapy for Pulmonary Arterial Hypertension Utilizing Pulmonary Artery-Targeted Nanocapsules and drug repositioning
Keywords:肺動脈性肺高血圧症, drug delivery system, drug repositioning
【背景】肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension: PAH)は、さまざまな肺血管拡張薬が開発されているにも関わらず、いまだにその予後が不良である難治性循環器疾患のひとつである。我々は他の疾患の治療薬として汎用されている薬剤Xが、PAHを改善させる可能性に着目した。この薬剤Xについては少数ではあるものの、重大な副作用が報告されている。そこで我々は、低用量の薬剤Xを肺動脈標的型ナノカプセルに封入することで副作用を軽減し、かつ重点的に肺動脈へ作用させうる、新規のPAH治療法が開発できるのではないかとの仮説を立て、本研究を実施した。【方法】少量の薬剤Xを、陽イオン性脂質を含む特定の脂質で構成されたリポソームに封入し、肺動脈標的型ナノカプセル(X-nano)を作製した。X-nanoの取り込みや細胞生存能を、健常コントロールおよびPAH患者から採取したヒト肺動脈平滑筋細胞(human pulmonary smooth muscle cells: hPASMCs)で、X-nanoによるPAHの治療効果については、PAH動物モデルであるSugen5416/低酸素負荷ラットで評価した。また、X-nanoの安全性についてはラットの血清生化学検査により評価した。【結果】製造したX-nanoが、hPASMCsの増殖を抑制する効果を持つことを実証した。次に、PAHモデルラットではX-nano投与によって血行動態、右心肥大、および肺小動脈中膜肥厚が改善することが明らかとなった。また、このX-nanoは健常ラットの肺よりも、PAHモデルラットの肺に有意に多く蓄積することが示された。ラット血清生化学的検査では、X-nano未投与群と投与群の間で有意な差を認めなかった。【結論】X-nano投与は、PAHにおける安全で革新的な治療法となりうる。X-nanoは薬剤Xによる副作用の軽減とPAHの病態の改善をもたらすことが期待される。