[II-OR18-04] 本邦における先天性心疾患を伴う肺高血圧症に対する薬物治療の現状
キーワード:先天性心疾患, 肺高血圧症, レジストリ研究
【はじめに】先天性心疾患を伴う肺高血圧症(CHD-PH)に対する薬物治療についての明確な使用基準はなく、国内の治療実態も明らかになっていない。【目的と方法】2021年8月から2023年12月に「CHD-PHの多施設症例登録研究(JACPHR)」に登録された症例(フォンタン型症例を除く)を対象に、本邦における薬物治療の現状とその有効性について検討した。【結果】対象となったのは218症例で、登録時年齢の中央値は11.6歳、染色体異常など基礎疾患を有する症例が約半数(48.6%)を占めていた。薬物治療は144例(66.1%)に行われており、90例(41.3%)は2剤以上の薬剤が使用されていた。臨床分類別に見た併用療法の割合は、Eisenmenger症候群 71.4%、左右短絡に伴う肺動脈性肺高血圧(PAH) 45.5%、小さな左右短絡を有するPAH (Coincidental PAH) 73.7% 、修復術後PAH 36.7%、左心性疾患 17.6%、肺疾患 0%、区域性PH 60.7%だった。使用薬剤で多かったのはmacitentan (mac) 81例(37.2%)とtadalafil (tad) 77例(35.3%)だった。登録時5歳未満の症例において多く使用されていた薬剤もmacとtadだったが、使用頻度はやや低かった(0~4歳:mac 24.4%、tad 28.9%)。過去のカテーテル検査との比較が可能であった75例について平均肺動脈圧(mPAP)中央値の変化を検討すると、無投薬群(17例) 29mmHg→27mmHg (p=0.84)、単剤治療群(26例) 33mmHg→25mmHg(p=0.002)、併用療法群(32例) 45mmHg→32mmHg (p=0.012)だった。臨床分類別みるとCoincidentalと修復術後PAHではmPAPが有意に低下していた。また、染色体異常などの基礎疾患を有する症例でも薬物治療群(26例)でのmPAPは有意に低下していた。【考察】小児期からmac、tadを中心とした積極的な薬物治療が行われている国内の現状が明らかになった。進行性PAHが多く含まれることが想定される群においても、積極的な薬物治療によりmPAPが低く維持されている可能性が示唆された。