[II-OR18-06] 主要体肺側副動脈を伴う区域性肺高血圧症における診断時期と背景疾患による治療効果の検討
キーワード:レジストリ―研究, 区域性肺高血圧症, 22q11.2欠失症候群
【背景】心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖に主要体肺側副動脈が合併した症例では比較的高率に22q11.2欠失が認められ、区域性肺高血圧症の合併が知られている。わが国では1999年から2008年までに3系統の肺高血圧症(PH)治療薬が保険収載されたが、区域性PHに対する効果についてエビデンスは得られていない。【目的】先天性心疾患を伴う肺高血圧症多施設症例登録研究(JACPHR)に集積された区域性PHの治療効果を診断時期と22q11.2欠失の有無で検討する。【方法】2023年12月時点でJACPHRに登録された区域性PHのうち、診断時と登録時の心臓カテーテル検査データが入手可能であった症例について、PHの診断年が2008年以前(pre群)と2009年以降(post群)で比較した。さらに、診断が2009年以降の症例(post群)において22q11.2欠失症候群(22qDS)群と非22qDS群で比較した。【結果】区域性PH全例(n=18)のうち、pre群(n=8)とpost群(n=10)の間で、PH診断時年齢、診断時平均肺動脈圧(mPAP)、登録時mPAP、登録時WHO機能分類に有意差はなかったが、診断時と比較して登録時のmPAPはpost群において有意に低下していた(mPAP差分の平均値:pre群2.8 mmHg、post群-13.7 mmHg、p<0.05)。post群のうち、22qDS群(n=4)と非22qDS群(n=6)間で診断時と登録時のmPAPを比較したところ、非22qDS群では全例低下していたが、22qDS群で低下していたのは1例のみであった。【考察・結論】現在の3系統のPH治療薬が保険収載される以前に診断された区域性PHの症例では、その後のPH治療薬の使用にもかかわらず治療に難渋していることがわかった。さらに、PH治療薬が使用されるようになった最近15年間に診断された症例においては、22qDS症例では効果は低い可能性があるものの、非22qDS症例の一部では治療効果が期待できることが示唆された。すなわち、区域性PH治療は、非22qDS症例では早期の治療介入が効果的であると考えられた。