第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

川崎病・冠動脈・血管

ポスター発表(II-P01-3)
川崎病・冠動脈・血管3

2024年7月12日(金) 12:40 〜 13:50 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:長井 典子(岡崎市民病院 小児科)

[II-P01-3-11] 心筋ブリッジを伴う冠動脈奇形が原因と疑われた急性心筋梗塞の一幼児例

上桝 仁志1, 美野 陽一1, 林谷 俊和2, 清水 敬太1, 山崎 隼太郎1, 小川 禎治2, 田中 敏克2 (1.鳥取大学医学部附属病院 小児科, 2.兵庫県立こども病院 循環器内科)

キーワード:心筋梗塞, 冠動脈奇形, 心筋ブリッジ

【背景】心筋ブリッジとは冠動脈が心筋内に埋没して走行する病態で、成人領域では稀に狭心症、心筋梗塞、致死性不整脈を引き起こすと報告されているが、小児では報告は少ない。今回、LADの低形成がありfeeding arteryとして発達した異常血管が心筋ブリッジを来たしたため尿道下裂の術後管理中に急性心筋梗塞(AMI)を来たした幼児例を経験した。【症例】4歳男児、早産低出生体重児、特異顔貌、軽度運動発達遅滞、筋性部VSD、尿道下裂あり。筋性部VSDに関しては自然閉鎖。全身麻酔下に尿道下裂に対して形成術を実施、トラブルなく手術は終了し一般病棟へ帰室したが、その後意識障害、SpO2低下を認めた。ECGでST上昇、UCGでEF 30%へ低下、心筋逸脱酵素の上昇を認め、AMIと診断した。翌日UCGでEF回復しているもののLMTから心室中隔方向の心筋内へ走行する冠動脈が確認されLAD、RCAが低形成であった。心筋逸脱酵素のピークアウトを確認、βブロッカー導入し発症後6日に鎮静解除、抜管するもHR上昇した際にVT出現、鎮静管理を再開とした。その後PICU管理目的に他院へ転院となった。CAGでRCA、LADの低形成および心室中隔内を埋没走行する血管が左心室のfeeding arteryとなっており、心収縮に伴い狭小化していることが確認された。虚血の原因となっていることは推定されたが外科治療困難と判断された。改めて鎮静薬等の調整を行い抜管したところ虚血イベント再燃なく、観察期間を経て退院となった。 【考察】尿道下裂の術後創部安静のための身体拘束が厳重であり、抜管、鎮静解除後に伴い心筋への負荷が極端に強くなってしまい、心筋ブリッジ部で物理的な冠動脈狭窄が生じたと考えられる。 【結論】心筋ブリッジを伴う冠動脈奇形はAMIのリスクであり、管理に注意が必要である。