[II-P01-5-08] 当院におけるファロー四徴症の治療戦略;段階的修復術から一期的修復術へ
キーワード:ファロー四徴症, 段階的修復, 一期的修復
【目的】体肺動脈短絡術は,非開心術でありながらリスクの高い術式であるとともに,肺血流の調節も難しい。当院では,2017年4月以降,乳児期早期に介入が必要になったファロー四徴症に対して,段階的修復(Staged repair)ではなく一期的修復(Primary repair)を第一選択としてきた。その治療方針の妥当性を後方視的に検討した。【対象と方法】2011年1月から2024年2月までの間に,当院で生後6ヶ月以内に初回の介入を要したファロー四徴症のうち,房室中隔欠損症や主要体肺動脈側副血行の合併を除外した連続57例を対象とした。2017年3月以前の前期群と2017年4月以降の後期群に分け,成績を比較検討した。【結果】前期群は27例,後期群は30例。初回介入時の日齢は前期群60.7 ± 42.5日,後期群114.3 ± 81.5日,体重は前期群4.61±1.62 kg,後期群5.64 ± 1.69 kgと,後期群の方が日齢,体重とも有意に大きいものの,前期群は一期的修復が1例(3.7%)のみである一方,後期群は22例(73.3%)で,統計学的に有意差をもって多かった。なお,後期群の段階的修復の8例のうち4例(50.0%)が経皮的右室流出路ステント留置術であった。両群とも死亡例は認めなかった。前期群の心内修復術の術式は,弁輪温存が11例,非温存が16例(transannular patch 8例,valved conduit 8例),後期群の心内修復術の術式は,弁輪温存が20例,非温存が10例(trans-annular patch 9例,valved conduit 1例)で,大半が一期的修復である後期群でも,有意差はないもののむしろ弁輪温存できたものが多い傾向で,かつ,右室流出路に対する再手術は後期群で少ない傾向にあった。【結語】乳児期早期に介入が必要になったファロー四徴症に対する一期的修復は,安全で,段階的修復に比べても同程度に弁輪温存可能であり,この治療戦略は妥当と考えられる。