[II-P01-6-04] 11歳まで異常なく、14歳時胸痛と動悸で発症した心尖部肥大型心筋症の1例
キーワード:心筋症, 学校心臓検診, 胸痛、動悸
【背景】心尖部肥大型心筋症は、初めて報告された日本では肥大型心筋症全体の約15%と比較的多いが、米国では3%と少なく、小児期発症は稀である。小児例は1985年に本学会誌で初めて報告されて以来、心電図検診による発見がほとんどである。今回、小学校の学校検診や11歳時の心エコー等で異常なく、14歳からの胸痛と動悸を主訴に15歳で発見された1例を経験した。【症例】男児。家族歴なし。小学校6年の内科健診で心雑音を指摘され当科を受診した。心電図、X線、心エコーと異常なく、機能性雑音の診断だった。中学校では不登校となり、検診を受けていない。14歳、覚醒時に胸部絞扼感と満腹時や入浴時の動悸を自覚し、15歳になり深夜に胸部絞扼感と背部痛があり、近医を受診した。心電図でI,II,III,aVF,V2~V6に陰性T波を認め、当科へ紹介された。身長165.2cm、体重50.5kg、血圧136/83mmHg、脈拍114/分、第三肋間胸骨左縁にレバインII度の収縮期雑音を聴取し、心エコーで左室内腔がスペード型を呈す、心尖部に限局した全周性の心筋肥厚(約14mm)を認めた。マスター負荷心電図では、安静時RV4=3.8mVと高くV4に巨大陰性T波があり、負荷後胸痛を訴えたがST変化はなかった。血中BNPが73.0pg/mlと高く、心筋逸脱酵素の上昇はなかった。ホルター心電図で総心拍数126,373/日と頻脈、期外収縮は心室1、上室2だった。小学校1、4年の検診心電図は異常なかった。【考察】心尖部肥大型心筋症は、成人では予後良好と考えられているが、小児期発症の予後は不明である。このような小児期の自覚症状は稀であり、慎重な観察が望まれる。また、診断前の心電図変化の報告があるが、小学校6年まで心電図異常なく、中学校では心電図を受ける機会がなく、この2~3年の経過はわからない。15歳では典型的な所見を示し、症状がなくとも心電図検診では抽出されると思われる。自然歴解明のためには、引き続き症例の蓄積が必要である。