[II-P01-6-07] A case of hypertrophic cardiomyopathy with sudden right ventricular outflow tract stenosis caused by a highly mobile tricuspid accessory valve
Keywords:三尖弁副弁, 肥大型心筋症, 右室流出路狭窄
【はじめに】肥大型心筋症に合併する僧帽弁副弁の報告は散見されるが、三尖弁副弁の報告は極めて稀である。また三尖弁副弁はファロー四徴症や他の先天性心疾患で右室流出路狭窄をきたす症例報告が散見される。今回三尖弁副弁により急激な血行動態変化をきたした肥大型心筋症の症例を経験した。【症例】生後2か月の男児。生後心雑音を指摘され、心エコー、心臓カテーテル検査で両心室心筋肥厚、体循環を超える高い右室圧(右室収縮期圧75mmHg、左室収縮期圧65mmHg、肺動脈弁下径4.5mm、右室流出路最大流速3.8m/s)を認め肥大型心筋症、右室流出路狭窄、心房中隔欠損症と診断した。また収縮期に右室流出路へ大きく可動する三尖弁副弁を認め、右室流出路狭窄の主因であると考えた。その後不機嫌を主訴に外来受診を繰り返し再入院した際、急激な酸素化低下、頻脈を伴う循環不全をきたし、人工呼吸器を含めた鎮静管理を要した。心エコーで右室流出路最大血流速度が4m/s以上と右室流出路狭窄の増悪を認め、左室流出路狭窄と僧帽弁逆流も新たに認めた。右室流出路狭窄増悪を契機とした急激な心房間右左短絡増加による酸素化低下に加え、右室-肺動脈順行血流の急激な減少により左室内腔が狭小化したため、左室肥大に伴う左室流出路狭窄が顕在化し、僧帽弁逆流が生じたと考えた。急激に血行動態が悪化しうる状態であり、可及的に右室流出路狭窄解除術を施行した。その際三尖弁中隔尖から派生する可動性のある副弁を切除し三尖弁形成を行った。術後右室流出路狭窄は改善したが、心筋肥大に伴う拡張障害による頻脈と肺鬱血の治療に難渋したため、βブロッカーとHCN-4チャネル阻害薬による心拍数のコントロールを行った結果、循環動態は安定した。【まとめ】三尖弁副弁を伴う肥大型心筋症の報告は非常に稀だが、副弁の可動性が高い場合は右室流出路狭窄を進行させ、全身状態の急激な悪化に繋がる可能性があるため注意が必要である。