第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

心筋心膜疾患

ポスター発表(II-P02-6)
心筋心膜疾患2

2024年7月12日(金) 16:15 〜 17:15 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:星野 健司(埼玉県立小児医療センター 循環器科)

[II-P02-6-06] 低血圧のためβ遮断薬の増量が困難となり,イバブラジンが心拍数の減少に奏功したDuchenne型筋ジストロフィー症例について

佐藤 工, 佐藤 啓 (弘前総合医療センター小児科)

キーワード:Duchenne型筋ジストロフィー症, DCM, ivabradine

【緒言】高い心拍数(HR)は,慢性心不全患者の予後不良因子として知られている. 20歳までに高率にDCM化するDuchenne型筋ジストロフィー症(DMD)においても,心機能の低下する以前からβ遮断薬やACE阻害薬による心筋保護療法の導入が推奨されている.今回我々は,カルベジロール(Ca)導入後,低血圧のためCa10mg/日以上に増量困難な成人DMDのDCM症例に対し,イバブラジン併用により有害事象なくHRの減少効果が得られた症例を経験したので報告する.【症例】現在24歳のDMD男性.15歳の初回介入当時,すでにLVEF43%と低下しており,速やかにエナラプリルとCaを開始し漸増したが,収縮期血圧80mmHg台が多く,Ca10mg/日以上には増量できなかった.LVEFは経年的に低下し,23歳でDCM化,左室壁はglobalにakinesisの状態となり,BNPも増加傾向を示した.さらにHolter上平均HR90~100/分台と頻脈傾向であったことから,24歳よりivabradine(Iva) 5 mg/日を開始.Iva開始後平均HRは70/日台に減少し,現在Iva10mg/日で維持.夜間睡眠中に一過性の洞性徐脈を認めることがあるが、さらなる血圧の低下はなく,BNPはやや低下した.【結語】重度にDCM化した成人DMD患者では,β遮断薬増量に対する忍容性が低い例が少なくない.Ivaは陰性変力作用がなく,HRの減少によって左室前負荷が増し,血圧も維持されることから,β遮断薬の増量困難なDMD症例においては,Ivaの導入を積極的に考慮すべきと考えられた.