[II-P03-1-04] 先天性完全房室ブロックに対してペースメーカー植込み後、心室中隔瘤様の左室同期不全・心機能低下を生じた一例
キーワード:先天性完全房室ブロック, ペースメーカー, 心室内同期不全
【背景】先天性完全房室ブロック(CCAVB)は新生児期、乳児期にペースメーカー植込み(PMI)を行うことで予後が大きく改善した。しかし、右室ペーシングにより心室内同期不全により進行性に心機能が低下し、左室ペーシングで改善することが報告されている。また左室収縮能が低下し、QRS時間の延長が見られる症例では心臓再同期療法(CRT)の適応が考慮される。今回、胎児期にCCAVBと診断されPMIを行ったが、その後左室の同期不全、収縮能低下を来たし、ペーシングリード位置変更、CRTを行った症例を経験したため報告する。【症例】在胎29週にCCAVB(心房レート140/分、心室レート50/分)と診断された。母体の自己抗体は陰性で、胎児水腫はなく経過した。在胎37週0日に胎児適応のため予定帝王切開にて出生し、Apgar 7 /8、体重3043g、LVEF は約60%だった。心拍数は50-60/分であり、日齢0にPMI(設定:DDD)を行った。心室リードは右室心尖部付近に留置し、術後は軽度の心室同期不全を認めたが、LVEFは正常範囲で経過した。哺乳・体重増加良好であり日齢18に自宅退院したが、日齢34に心室中隔瘤様に観察される左室同期不全、LVEF低下(34%)を認めた。薬物的心不全治療を開始したが、月齢4に心不全の急性増悪を認めECMO管理を要した。心室リードを右室から左室心尖部に変更し、同期不全の改善が得られECMO管理は離脱できたが、左室収縮能の改善は乏しかった(LVEF 20-30%)。ミルリノン依存性であり、QRS時間180msecと延長しており、月齢6にCRTに変更したが、QRS時間や左室機能の改善は見られなかった。心室リード位置調整のため月齢7に他院へ転院した。【結論】心奇形のないCCAVB胎児診断例に対する、右室心尖部へのPMI後、心室中隔瘤様の心室同期不全、左室機能低下を生じた症例を経験した。右室側へのPMI後に心室同期不全、心収縮能低下の進行が見られる際は左室ペーシング、CRTへの変更を考慮する必要がある。