[II-P03-1-06] 過換気発作によりTorsade de pointes を繰り返したQT延長症候群の1例
キーワード:QT延長症候群, Torsade de pointes, 過換気発作
【背景】QT延長症候群(LQTS)はTorsade de pointes(TdP)により失神や突然死を引き起こし、低カリウム(K)血症はそのリスク因子となる。今回、過換気発作による低K血症のために、TdPを繰り返したLQTSの1例を経験した。【症例】15歳女子。過換気発作の既往なし。小学4年時の心臓健診でQT延長を指摘され当院を受診した。LQTS・突然死の家族歴、失神の既往はないが心電図でQTc(F)=0.491、V4-V6誘導にノッチ型T波を認め、先天性LQTSスコア4点を満たした。遺伝子検査ではKCNH2遺伝子にフレームシフト変異を認め、LQTS2型と診断した。β遮断薬内服により失神やTdPなく経過していた。入院当日、過換気のため近医に救急搬送された際、心電図でTdPを認め、その後持続性の心室頻拍へ移行したため除細動が施行され、当院へ搬送された。当院到着後も過換気とTdPを繰り返し、血液検査で呼吸性アルカローシスと低K血症(3.1mEq/L)を認めた。入院後、硫酸マグネシウム投与とK補正、持続鎮静を行いTdPの発症は抑制された。しかし、鎮静薬の減量に伴い、不整脈への不安から過換気発作とTdPを繰り返した。そのため、抗不安薬を開始し、さらに、小児精神科医と心理士の介入も行った。抗不安薬はQT時間への影響が少ないジアゼパムとアリピプラゾールを選択した。抗不安薬の投与と心理的ケアの介入後は、過換気発作は軽減し、TdPの再燃なく経過した。入院20日目に皮下植込み型除細動器の植え込み術を行い、入院29日目に退院した。【考察】過換気発作は低K血症を惹起し、LQTSにおいてはTdPのリスクとなりうる。過換気発作は種々の不安から引き起こされることが多いが、発作予防のための抗不安薬を導入する際には、QT時間への影響を考慮する必要がある。また、小児精神科医や心理士の介入も重要である。