[II-P03-2-01] Berlin Heart Excor装着時の中等度大動脈弁逆流への介入の検討
キーワード:Berlin Heart Excor, 大動脈弁逆流, 大動脈弁形成
【目的】補助人工心臓の問題点として装着後の大動脈弁逆流の進行がある。そのため、装着時には大動脈弁への介入が必要な場合もあるが、新生児や乳児期早期の大動脈弁は脆弱であり手術介入に躊躇することもある。今回、我々は小児Berlin Heart Excor(BHE)症例における大動脈弁逆流の影響について検討した。【方法】2015年から2023年の間に当院でBHE装着をした26例を対象とした。生存率と死亡リスク因子の解析を行った。また、術前の大動脈弁逆流の有無によるBHE装着後の大動脈弁逆流の進行を比較検討した。【結果】BHE装着期間の中央値は13.4ヶ月(5.8-24.4)であった。BHE装着時の年齢、体重の中央値は12.2ヶ月(8.4-79.0)、7.5kg(5.1-13.9)であった。先天性心疾患を4例(15%)に認め、4例(15%)でBiVADを必要とした。BHE装着前にmild、moderate以上の大動脈弁逆流を認めた症例はそれぞれ3例(12%)、2例(8%)であった。BHE装着後の6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月の生存率は91.6%、83.9%、73.5%であった。単変量解析では、術前のmoderate以上の大動脈弁逆流(p=0.025)、BHE装着時の体重5kg未満(p=0.03)が死亡リスクであった。また、術前に大動脈弁逆流を認めた群では認めていない群に比べBHE装着後の大動脈弁逆流進行率は有意に高かった(p<0.01)。 BHE装着後に大動脈弁形成を2例で施行し、1例は新生児であった。大動脈弁は非常に脆弱でpark’s stitchによる形成は不可能であった。血栓リスクの増加が懸念されたが、血行動態安定化のためPatch closureを施行し逆流を制御できた。【結語】BHE装着時の体重5kg未満でmoderate以上の大動脈弁逆流を認める症例は死亡リスクが高かった。また、術前の大動脈弁逆流が軽度であっても進行する可能性があり、BHE装着時に大動脈弁への介入を検討した方が良い。しかし、血栓リスクの増加が懸念されるため大動脈弁形成の方法にはさらなる検討が必要である。