[II-P03-2-02] Fontan術後遠隔期に急性壊死性脳症を発症した1例
キーワード:Fontan術後, 急性壊死性脳症, 集中治療
【背景】複雑心奇形の治療成績が向上し、Fontan術後患者が年々増加している。そして、Fontan術後患者が感染症などの急性疾患を罹患し、入院加療を必要とすることも増えている。今回、Fontan術後の単心室患者が予後不良な急性壊死性脳症(ANE)を発症したものの、後遺症なく生存退院した1例を経験した。【症例】11歳男児。左心系単心室の診断で1歳時にFontan手術(Fenestrationなし、18mm導管)を施行した。術後のCVPは10mmHg程度で推移し、術後経過は良好だった。発症当日の朝から発熱があり、就寝時につじつまの合わない言動が増え、当院に救急搬送された。当院搬送時はJCS1桁の意識障害があり、インフルエンザ迅速検査が陽性であり、採血では軽度の肝・腎機能異常や凝固異常があり高サイトカイン状態が示唆された。急性脳症を疑いPICUに入室し、ステロイドパルスを含む治療を開始した。翌日に全身強直性の間代性痙攣があり、頭部MRI検査を施行すると左右対称性の視床病変を認め、ANEと診断した。TCPC術後でありCVPの上昇は頭蓋内圧上昇のリスクとなり得るため、可能な限り人工呼吸器による陽圧換気を避け、さらにCVPをモニタリングしながら管理を行った。また、単心室循環による血圧の不安定性を懸念し、脳灌流圧の維持のため、ノルアドレナリンを投与しながら血圧管理を行った。血漿交換とステロイドパルスを施行し、意識レベルは改善傾向を示し第7病日に一般病棟へ転出、利尿剤を内服で追加し、血栓予防内服はワーファリンのみとした。第19病日に神経学的後遺症なく退院した。【結語】Fontan術後患者に発症したANEの後遺症なき救命例を経験した。Fontan循環に発症する重症急性疾患では、原因疾患治療だけではなく、その特殊な循環に結びつけて肺循環・体循環を維持する必要があり、各臓器のスペシャリストと小児循環器科医・循環器集中治療医の協力が欠かせないと考えられた。