第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

川崎病・冠動脈・血管

ポスター発表(II-P03-2)
集中治療・周術期管理2

2024年7月12日(金) 17:20 〜 18:20 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:櫨木 大祐(鹿児島市立病院 小児科)

[II-P03-2-09] 小児集中治療における体液量過剰の評価としての推定糸球体濾過量の有用性について

野竹 慎之介, 伊藤 怜司, 中村 祐輔, 古河 賢太郎, 馬場 俊輔, 安藤 達也 (東京慈恵会医科大学 小児科学講座)

キーワード:中心静脈圧, 推定糸球体濾過量, 体液量過剰

【背景】成人集中治療領域では、心腎連関として体液量過剰による腎うっ血の評価として、中心静脈圧(central venous pressure; CVP)の関連は大きいとされている。すなわち、腎うっ血の病態においては、腎機能とCVPの間に相関があると言える。【目的】小児集中治療領域において、CVPと推定糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate; eGFR)の相関があるかどうかを明らかにする。【方法】2018年1月から2023年12月に当院のPICUに入室し、入室時から継続的にCVPを測定していた症例を対象とし、診療録を後方視的に検討した。eGFRとCVPに関して、入室中にeGFRが最も増悪した段階と退室時をそれぞれ抽出し、その相関を検討した。【結果】62例が抽出され、男女比は36:26、月齢の中央値は5.5か月(0-295か月)、身長の中央値は63.2cm(42.8-169.2cm)、体重の中央値は5.93kg(2.1-50.35kg)であった。eGFRが最も増悪した段階でのCVPとeGFRは弱い相関を示した(R2=0.210)が、退室時までの変化率は相関を示さなかった(R2=0.046)。【考察】体液量過剰の指標としてeGFRが有用である可能性が示された。ただし、その変化率においてはCVPとの相関は示されず、成人の先行研究とは異なり体液量過剰の改善の指標としては有用でない。本研究の対象にはフォンタン循環症例を含んでおり、基礎値としてのCVPに差が生じたこと、腎疾患自体に伴う影響を加味していないことが解析結果に影響を与えたと考えられた。eGFRを用いて体液量過剰の評価の一助とし、利尿薬などの治療方針の決定に寄与する可能性があると考えらえた。さらなる症例の集積や左室拡張末期径や心胸郭比など他の体液量過剰の指標とも比較検討し、体液量過剰指標としての有用性の検討が必要であると考えられた。【結論】体液量過剰の指標としてeGFRが有用である可能性が示された。