[II-P03-2-10] 小児心臓手術後の一酸化窒素吸入療法
キーワード:術後管理, 一酸化窒素吸入療法, 外科治療
【はじめに】2015年にアイノフローRの適応が心臓手術周術期の肺高血圧治療に拡大し、使用数も増加した。当院の傾向を検討する。【方法】2015年~23年12月の小児心臓手術件数は602例。術後に一酸化窒素吸入療法(inhaled Nitric Oxide : iNO)は144例に行い、全体の24%(144/602)であった。使用目的と内訳は1.術後PH治療が85例(VSD 31/129,cAVSD 10/26, TAPVC 14/20, TGA 6/15, CoA/IAA 6/33, 他17)、2.肺血流減少疾患に対する治療目的が34例(TCPC 12/23, Glenn 11/24, BTs 11/27)、3.右室後負荷軽減目的が25例(TOF 11/24, Rastelli 7/11, DORV 4/6, 他3)であった。【結果】1.肺高血圧治療:術前RVp/LVp>70%に対し術後iNO投与した。PH crisis発生は1例。生後6mのTOF合併cAVSD例で背景に21trisomy、Low PAI,長時間心停止、右室切開、右室流出路狭窄遺残など複数リスクを有した。開胸CPR後、内科的治療で軽快した。TAPVC, CortriatriatumのiNO使用頻度は高く長期間の傾向があり、多くがPAH薬への移行を要し、その後の投薬も長い傾向があった。2.肺血流減少疾患:術後iNO投与したBTs 11例中3例がPAH薬へ移行した。High flowに注意し、次回手術までに休薬した。Glenn, TCPC術後ではHFNC+iNOを用いて早期呼吸器離脱を試みた。リハビリと経口摂取の早期開始のメリットがあった。重症例にiNO投与する傾向から、同時期のiNO非投与例と比較してドレーン留置期間、ICU滞在、入院期間は短い傾向を認めたが有意性は認めなかった。3.右室後負荷軽減:iNO投与25例のうち15例がPAH薬へ移行した。多くは右室機能改善し半年以内(12/15例)で終了した。【まとめ】肺高血圧治療に加え、右室負荷症例や肺血流減少疾患へもiNO使用を拡大した。術後PH治療においてcrisis頻度は低いが注意が必要。肺血流減少疾患や右室負荷症例へのiNO適応と効果評価には追跡が必要。iNO治療からPAH治療薬への移行は疾患ごとの評価が必要。