[II-P03-3-04] 左冠動脈閉鎖・狭窄の診断に至った2症例
キーワード:左冠動脈閉鎖・狭窄, 左冠動脈開口部形成術, 失神
【背景】左冠動脈閉鎖・狭窄は稀な疾患であるが、小児期における突然死や心筋梗塞の原因となりうる疾患である。側副血行路の発達状態が症状の有無に大きく関与すると考えられ、胸痛・失神などの臨床症状を契機に診断されることが多いが、稀に無症状で経過することがある。当院で診断に至り、治療介入を行なった2症例を報告する。【症例1】5歳男児。2歳時に心雑音を指摘され、大動脈弁上狭窄の診断で外来経過観察を行っていた。7番染色体および遺伝子検査は異常なし。5歳時に狭窄の進行あり、カテーテル検査を施行した。狭窄部圧較差は46mmHgで、造影検査で左冠動脈は開口部で完全閉塞しており、右冠動脈からの側副血行路が認められた。無症状であり、負荷心電図で虚血所見はなかったが、心筋シンチグラムでは心尖部・前中隔に心筋虚血を疑う所見があり、大動脈弁上狭窄部解除および自己心膜を用いた左冠動脈開口部形成術を施行した。【症例2】7歳女児。生来健康。小学校入学後より運動時の胸痛および失神があり、前医でマスター負荷心電図を施行したところ、胸痛の訴えと全胸部誘導にST低下を認めたため、当科紹介受診となった。造影CTでは、左冠動脈主幹部の99%狭窄を認め、心臓カテーテル検査でも同様の所見であり、右冠動脈からは側副血行路を認めた。アテノロールの内服を開始し、左冠動脈開口部形成術を予定している。【考察・結語】大動脈弁上狭窄症の精査時に診断された無症状の左冠動脈開口部閉塞症例と、運動時の胸痛・失神を契機に診断された左冠動脈起始部の内腔形成不全と考えられる重度の狭窄症例を経験した。閉塞機序および診断契機は異なるが、小児期における冠動脈閉鎖症は、側副血行が豊富であったとしても活動量の増加する学童期以降に有症状となり突然死の原因となり得るため、血行再建術を行うことが望ましい。今後、術後中長期の経過観察による再評価が必要であると考えらた。