[II-P03-4-03] 右冠動脈肺動脈症を合併した左室低形成症候群に対してNorwood手術を施行した1例
キーワード:HLHS, 冠動脈起始異常, Norwood procedure
【背景】左心低形成症候群(HLHS)と冠動脈起始異常の合併は非常に珍しく, そのほとんどが左冠動脈肺動脈起始症 (ALCAPA)の合併である. HLHSとALCAPAの合併は0.46-1.2%との報告があるが, 右冠動脈肺動脈起始症(ARCAPA)との合併は更に珍しく, これまで症例報告は1例しかない. また, 肺動脈幹からの起始異常の合併は報告がない. 今回我々は肺動脈幹からのARCAPAを合併したHLHSに対して術前診断に基づいて適切な心筋保護ルートを確立し, Norwood手術を施行した症例を経験したので報告する. 【症例】胎児エコーでHLHSと診断され、在胎39週5日、Apgar8/9、3315gで出生した男児. 出生後の心エコーでHLHS(Mitral valve stenosis /Aortic valve atresia : MS/AA), 動脈管開存症, 卵円孔開存症と診断された. 日齢6で両側肺動脈絞扼術を施行し, 生後1か月程度でNorwood手術を計画した. Norwood手術術前の造影CTと心エコー検査で右冠動脈が主肺動脈幹から起始している所見を認め, ARCAPAと診断された.生後39日にRV-PA conduitによるNorwood手術を施行した. 本症例では心筋保護液を主肺動脈(右冠動脈)及び上行大動脈(左冠動脈)に投与した. また, 新大動脈の再建は中枢側から行うことで2回目以降の心筋保護液を新大動脈基部から投与するルートを確立した. 術後経過, 心機能共に良好で, 現在Glenn手術待機中である.【まとめ】HLHSと冠動脈起始異常の合併は非常に珍しく, 術前診断が困難であり, 解剖で初めて診断される症例も少なくない. Norwood手術中に診断された症例の死亡率は高く, 死亡症例の多くは心筋保護が不十分であることが原因と報告されている. 本症例では術前診断の上で適切な手術戦略を構築し, 術中の心筋保護を確実に行うことで冠動脈起始異常を合併したHLHSに対するNorwood手術を行うことができた.