第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望シンポジウム

会長要望シンポジウム2(II-PSY2)
動脈管依存性肺血流疾患の姑息術 動脈管ステント vs. Blalock-Taussigシャント

2024年7月12日(金) 08:00 〜 09:30 第1会場 (3F メインホール)

座長:金 成海(静岡県立こども病院 循環器科)
座長:笠原 真悟(岡山大学 心臓血管外科)

[II-PSY2-2] 動脈管依存性肺血流疾患に対するBTシャントと動脈管ステントの比較

石垣 瑞彦1, 金 成海1, 渋谷 茜1, 眞田 和哉1, 佐藤 慶介1, 芳本 潤1, 満下 紀恵1, 新居 正基1, 伊藤 弘毅2, 坂本 喜三郎2, 田中 靖彦1 (1.静岡県立こども病院 循環器科, 2.静岡県立こども病院 心臓血管外科)

キーワード:体肺短絡術, 低侵襲治療, 姑息術

【背景】肺血流維持を目的とした動脈管ステント(Ductal stenting:DS)留置術は,当初のハイリスク症例に加えて,近年,欧米でもアジア各国のように外科的BTシャント術(BTS)の代替として広く施行されている.当院でもDSは染色体異常や併存全身疾患,類洞交通といったハイリスク群で開始し,標準的な群への適応を拡大した段階である.【目的】当院でのDS群とBTS群の周術期および治療効果を比較すること.【方法】当院で施行したDS群11例と,BTS群として2015年以降に初回介入としてBTSシャントを施行した35例(肺動脈形成以外の追加術式例は除外)を診療録をもとに後方視的に検討した.【結果】基礎疾患はDS群,BTS群の順に,二心室修復対象例8例/23例(TOF/DORV6例/8例,PAVSD1例/10例,その他1例/5例),単心室修復対象例3例/12例(PAIVS2例/1例,心房内臓錯位症候群 0例/6例,その他1例/5例)であった.出生体重は,2620(350-3177)/2602(1707-3520)gで,染色体異常や併存全身疾患は4/11例,10/35例(心房内臓錯位症候群は除く)であった.介入時の日齢,体重は,26(18-340)/53(14-277)日,3.3(2.9-4.8)/4.1(2.7-7.9)kg(p<0.01)であった.また挿管期間2(1-7)/6(1-26)日(p<0.01),ICU入室期間は4(3-13)/11(5-67)日(p<0.01)であった.合併症はDS群:穿刺部血管損傷2例,BTS群:反回神経麻痺4例,乳び胸3例,心タンポナーデを含む心嚢ドレナージ追加3例,縦隔炎2例,脳梗塞1例で,周術期死亡例はBTS群で1例であった.また,次期手術介入時までの計画外の再介入は1例/3例で,手術時のPA indexは219(112-327) /235(96-703) mm2/m2で,手術時間,人工心肺および循環遮断時間は同等であった.【考察・結語】海外でのデータと同様に挿管期間やICU入室期間で有意差を認めた他は,DS群とBTS群は同等であった.肺血流を動脈管に依存する心疾患の初回姑息術としてDSはBTSと同等に有力な選択肢となり得る.