第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望シンポジウム

会長要望シンポジウム3(II-PSY3)
気道狭窄を合併した心疾患の治療戦略

2024年7月12日(金) 09:40 〜 11:20 第3会場 (4F 409+410)

座長:田中 敏克(兵庫県立こども病院 循環器内科)
座長:大木 寛生(東京都立小児総合医療センター 循環器科)

[II-PSY3-6] 先天性気管狭窄症の周術期管理

森本 健司, 三森 宏昭, 武知 峻輔, 村上 拓, 木下 彩希, 水野 智子, 板倉 隆太, 笠木 実央子, 渡邉 伊知郎, 齊藤 修 (東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部門 集中治療科)

キーワード:集中治療, 気管狭窄, 小児

【背景】
先天性気管狭窄症は複数領域の診療チームによる集学的診療を要する疾患である。当院呼吸器センター発足にあたり、過去の成績を振り返り、改善を模索するのは重要な作業である。
【方法】
当院で2018年から2024年までに先天性気管狭窄症に対して外科的介入を行なった患者において、背景、管理方法、予後を示し、その結果と外科チームの過去データを比較し、集中治療医が成績向上に寄与しうる点を考察した。
【結果】
先天性気管狭窄術でPICUに入室した患者数は調査期間で35例だった。ICU内死亡は3例だった。ECMOを要したのは術前に1例、術後14例だった。循環器疾患の合併は肺動脈起始異常が最も多く14例、単心室病態は1例だった。手術以外の管理は、頻回の気管支鏡検査によるミリ単位の気管挿管チューブ固定長の調整、先端を切断したチューブや陰圧式固定器具の使用での狭窄部への配慮などが徹底して行われていた。
【考察】
過去のデータでは、当院開設から10年の成績は前身施設と比較し優れており、今回示した成績もほぼ同等だった。周術期管理はルールの理解と習熟を要する内容が多く、当院開設と同時に発足したPICUも良好な転機に寄与していると考察された。集中治療医の役割には、患者搬送、臓器不全管理、合併症予防、根本治療・そのサポートが挙げられ、本疾患の根本治療である手術を良好な状態行うためのそれらは非常にきめ細かく、またときに大胆に行う必要があり、手術と同様高い専門性を要する。また、複数科が関わることで生じうる紛争の解決、患者家族との難しい対話、終末期ケアの提供の役割も担っている。今後、より複雑な心疾患を合併した患者に対応できるよう循環器集中治療、体外循環管理の教育・研究により注力すべく、教育システムの見直しや臨床試験科との連携を図っている。
【結語】
気管狭窄疾患管理における集中治療医の役割は大きく、他科と協力しつつ、絶え間ない診療の質向上が必要である。