[II-SY7-1] 肥大型心筋症における遺伝子診断の意義と実践
Keywords:肥大型心筋症, 遺伝学的検査, 精密医療
肥大型心筋症(HCM)の原因として心筋ミオシン重鎖遺伝子にミスセンス変異が同定されて30年以上経過し、その後の遺伝子解析研究によって複数の原因遺伝子が報告されてきた。HCMの遺伝学的検査は、家系内スクリーニングによる早期診断、二次性心筋症の鑑別、予後予測などに有用となる可能性がある。さらに、心筋ミオシン結合蛋白C遺伝子変異をターゲットにした遺伝子治療が近年報告され、HCMにおいても遺伝情報を利用することで精密医療を展開し、疾病予防や治療を行うことが期待されるようになってきた。一方で、2022年度から本邦においてHCMの遺伝学的検査が保険収載されたにもかかわらず、その利用は限定的である。この背景には、遺伝学的検査を請け負う施設あるいは会社が限られていることや病的バリアントの判定基準が明確でないことなどが挙げられる。今回の講演では、HCMの遺伝子解析によるこれまでの成果を解説するとともに、臨床応用に向けての今後の展望について述べる。