[II-TISL-1] Ebstein病の形態と疾患概念
キーワード:Ebstein, 形態, 外科治療
Ebstein’s anomalyは①三尖弁偏位②右房化右室③機能的右室狭小化 等の形態的異常を伴う疾患群で多くが三尖弁閉鎖不全を伴う。また房室接合部における線維輪形成も障害されることがあり、房室副伝導路の残存によるWPW症候群の合併例が存在する。 Ebstein’s anomalyは、三尖弁中隔尖と後尖の発生段階における心内膜床の浸食(undermining)過程の異常により、弁尖と腱索は心室中隔壁、又は右室自由壁に貼り付けられ癒着(plastering)し、弁尖付着位置が右室心尖方向にずれ落ちた形態となる。また前尖は心尖方向への偏位はないものの弁尖形態異常と右室への付着異常を伴う。その結果、弁輪は心尖方向へ偏位して機能的右室容積は減少し、弁輪と本来の弁付着位置との間に電気的には右室でありながら機能的に右房として働く“右房化右室”が生まれる。またこれらの形態的異常に伴って刺激伝導系にも異常が及ぶ。疾患の重症度は、①三尖弁のplasteringと異形成による弁機能不全の程度②機能的右室容積を含めた右室の機能③WPWを含めた不整脈 により臨床像は多様を極める。成人まで無症状に経過し心雑音やWPW症候群による上室性頻拍発作で発見される軽症例から、最重症例では著明な心拡大、肺低形成により胎児死亡、あるいは重症心不全や呼吸不全により新生児期に死亡する例まで様々である。 外科治療の歴史は1950年代BTシャント、Glennなどの姑息手術に始まり、1960年代から三尖弁へ直接介入(弁置換)が行われた。1970年以降、種々の弁形成(Hardy法、Danielson法、Carpentier法、Cone法)が開発される一方、新生児重症例に対する姑息手術として1991年にStarnes法が報告された。今回の講演ではEbsteinの形態と病態を中心に外科的治療法を含めて解説する。