[III-CPD6-1] 子どもの運動発達
キーワード:先天性心疾患, 運動発達, 乳幼児期
定型運動発達の範囲内で成長する先天性心疾患(Congenital Heart Disease;CHD)患児がいる一方で,運動発達の遅れを認めるCHD患児は臨床上少なくない.運動発達は自らの行動で自らの変化を促す,感覚運動体験を通した自己組織化の過程であり,姿勢と課題を達成する為の行動が,運動/感覚/言語/社会性等の各発達領域間が相互に関連し発達していく.スキャモンの発育曲線では,子どもの神経系(脳、脊髄、視覚器、頭囲)の発達は6歳までに約90%に達し,一般系(身長、体重、骨格、筋肉量)の発達は,出生直後より急激な成長を遂げ10歳以降で成人の能力へ成長するとしている.CHD患児では,遺伝的背景や心臓奇形の複雑さ等に比例し神経発達障害のリスクが高まると報告がある.更に出生後から入院を繰り返し複数回の手術を経験する事も多いため,神経系や運動発達が著しい時期の行動と活動制限によって,運動発達の遅れが惹起される可能性は高い.この様な複数の要因で表面化した運動発達の遅れに対し,漠然とした不安を感じるご家族も多い.CHD患児の運動発達を促すために,過負荷への留意はもちろんのこと,患児の運動発達段階に則した最近接領域の課題経験が必要である.そして,CHD患児に適切な課題経験を提供するためには,定型運動発達の理解が重要であると考えられる.運動発達の理解の下,患児の課題を共有し,多職種とご家族で関わる事が運動発達を促す上で重要と考える.さらに,運動発達を促す関わりは,結果として各発達領域に対する変化の一助となる可能性があると考える.本パネルディスカッションでは,特に変化の大きい乳幼児期に焦点を当て,定型的な運動発達の観察ポイントについて提示し,運動発達に対する理解を深める事を目的とする.