[III-CSY4-14] 心臓シミュレーター”ped UT-Heart"の開発とその応用に関する研究
キーワード:ped UT-Heart, 複雑先天性心疾患, デジタルツイン
新生児・乳児に行われる複雑先天性心疾患の外科手術には、複雑な心臓大血管の解剖学的異常の立体構築を正確に把握するとともに、事前に術後の血行動態を適切に予測して個々の患者に最適な手術術式及び治療方針を決定することが重要である。“軟質実物大3D心臓モデル”は、複雑先天性心疾患の立体構築を手にとって正確に把握できるとともに、事前に切開と縫合による模擬手術を可能とした。一方、東京大学とUT-Heart研究所が開発した、スーパーコンピュータを使った心臓シミュレータ“UT-Heart”は、分子・細胞機能に基づき患者の心臓をin silicoで忠実に再現することができる。今回我々は、このUT-Heartを基盤に、小児先天性心疾患患者の術式を含む最適な治療方針の決定を支援する新しいシステム“ped UT-Heart”を開発した。2021年には後ろ向き研究によるプログラム開発を実施し、2022-23年には前向き特定臨床研究によるfeasibility study(jRCTs052210139)を終了し、この機器の有用性と安全性を示した。現在は、医療機器承認を目指した治験実施に向けて、機器の検証試験とプロトコル確定作業を実施している。これらのリアル(軟質実物大3D心臓モデル)とバーチャル(ped UT-Heart)の2つのシミュレーション技術を融合させた新しい心臓外科手術の支援システムは、外科手術が困難な複雑先天性心疾患患者が、術前の心臓形態と血行動態から正確な解剖学的理解と数理計算に基づき予測される最善の外科手術を受けることを可能とするデジタルツインプロジェクトの一例である。(本機器は、東京大学新領域創成科学研究科、UT-Heart研究所(株)、ジャパンメディカルデバイス(株)、PIA(株)、(株)クロスメディカルとの共同研究開発による。)