第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

委員会企画シンポジウム

委員会企画シンポジウム4(III-CSY4)
課題研究委員会年次報告セッション

2024年7月13日(土) 09:10 〜 10:40 第2会場 (5F 501)

座長:新居 正基(静岡県立こども病院)
座長:武田 充人(北海道大学大学院医学研究院 小児科学教室)
パネリスト:澤田 博文(三重大学医学部附属病院 小児・AYAがんトータルケアセンター)
パネリスト:吉兼 由佳子(福岡大学医学部小児科)
パネリスト:石田 秀和(大阪大学大学院医学系研究科 小児科学)

[III-CSY4-7] 冠動脈瘤を伴う川崎病患者のレジストリ研究;KIDCAR

小山 裕太郎1, 三浦 大1, 小林 徹2, 鉾碕 竜範3, 菅沼 栄介4, 沼野 藤人5, 古野 憲司6, 塩野 淳子7, 布施 茂登8, 深澤 隆治9, 三谷 義英10 (1.東京都立小児総合医療センター 循環器科, 2.国立成育医療研究センター 臨床研究センター, 3.横浜市立大学附属病院 小児循環器科, 4.埼玉県立小児医療センター 感染免疫・アレルギー科, 5.新潟大学医歯学総合病院 小児科, 6.福岡市立こども病院 総合診療科, 7.茨城県立こども病院 小児循環器科, 8.NTT東日本札幌病院 臨床検査科, 9.日本医科大学付属病院 小児科, 10.三重大学医学部附属病院 小児科)

キーワード:川崎病性冠動脈瘤, アンジオテンシン受容体拮抗薬, アンジオテンシン変換酵素阻害薬

【背景】冠動脈瘤を合併した川崎病について,冠動脈イベントや瘤の退縮に関わる因子など明らかでないことも多く,適切な管理法も確立していない.【方法】本研究は,2015年以降に発症した川崎病患者のうち中等瘤あるいは巨大瘤を合併した症例を対象とした多機関共同レジストリ研究である.対象患者における内服治療の内容,瘤の推移,冠動脈イベント(血栓,狭窄,閉塞)発生の有無について年1回の追跡調査を行った。【結果】2023年8月時点で53施設より209例が登録された.発症時年齢は3.3 ± 3.2歳で男性が158例(76%)を占め,小林スコア4.8 ± 2.7点で6.0 ± 4.4病日に治療が開始され,148例(72%)が初期治療に不応であった.巨大瘤が46例(22%)おり,2.3 ± 1.0年の追跡期間内で,冠動脈イベントは17例(8%)発生した.また,遠隔期治療としてアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)/アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)が47例(22%)に使用された.ARB/ACEi投与群は非投与群と比較し,初期治療に不応で(87% vs. 66%, p < 0.01),巨大瘤の割合が多く(32% vs. 20%, p = 0.08),瘤の最大径が大きい(6.7mm vs. 5.5mm, p < 0.01)にも関わらず,退縮率は同等だった(67% vs. 65%).多変量解析ではARB/ACEiが退縮に関与する傾向が示された(ハザード比1.5,95%信頼区間0.91 – 2.46,p =0.12).【考察】ARB/ACEiは成人領域では動脈硬化の抑制や血管保護作用が知られている.冠動脈瘤に対して一般的に行われる抗血栓療法に追加することで,冠動脈イベントを抑制し,瘤の退縮を促すことができる可能性が示唆された.