[III-CSY5-5] 地域拠点化:九州の取り組みと現状
Keywords:地位拠点化, 集約化, 先天性心疾患
<九州の現状>九州地方の人口や出生数などは全国の約10%を占めており、九州7県に山口県の一部を含む地域が小児循環器領域としての医療圏である。小児心臓外科、小児循環器科ともに“九州の患者は九州で治療”を目標に、それぞれに相談・協力し合える関係を築いてきたことで小児心臓手術の拠点化が自然に成立してきた。実際に2022-2023年に胎児診断を含む出生後7日以内の入院患者43例(胎児診断25例)のうち、九州各県からの紹介は30例(胎児17例)と約70%を占める。中でも左心低形成症候群は、ほぼ全例が当院でのNorwood手術を前提に搬送となるが、各地域病院での両側肺動脈バンディングや心房中隔裂開術の先行など柔軟な対応も可能である。一方で成人先天性心疾患や移植医療、一部のカテーテル治療については大学病院を中心とした拠点化が成り立っていることも九州の特徴といえる。小児心臓手術施設は減少しており小児心臓血管外科育成プログラムへの参加は現在4施設、小児循環器修練施設群は九州山口で7つあり、各県に5人以上の小児循環器専門医が登録されている。<患者紹介の実際>胎児診断では、当院での胎児心エコーの結果により周産期管理の方法と施設を選択する。新生児期早期に安定した血行動態が見込まれる疾患では、地元病院で治療を開始し外科介入にあわせて転院となる。胎児診断なく緊急手術が必要な症例では、佐賀・長崎・熊本・大分からは救急車あるいはヘリ、宮崎からはヘリ、鹿児島からは新幹線で主に搬送され、いずれも所要は2-3時間以内である。非緊急症例ではカンファレンスに遠隔参加してもらい、各医療機関との情報・方針共有をより密にしている。<今後の課題>患者の集約化は進みつつあるが、マンパワー特に心臓外科医・集中治療医の集約化、一方で各地域病院での小児循環器研修の水準維持が課題である。また、情報共有の在り方や地域による胎児診断率の差などにも改善の余地がある。