[III-MSS-1] なぜ、より安全な組織に心理的安全性が欠かせないのか?
キーワード:医療安全, 心理的安全性, 心理的安全性
小児循環器の診療は、その必然性から、究極のチーム医療のうえに成り立っているとされている。内科系と外科系が混合で成立するチームであり、医師以外に看護師や栄養士・保育士・理学療法士・臨床心理士・ME・薬剤師そして患児の家族と極めて多様性が高い。しかし、多様性が高いことは、必ずしもチームの生産性が上がるわけではなく、優れたチームが成立するためにはいくつかの要素が必要となる。Google社は、更なる業績の向上を目指して、膨大な資金と時間をかけて、生産性の高いチームの特性を見出そうとした。驚くことに、一般的にわれわれが優れたチームの要素と思いがちなメンバーの良好な関係、共通の背景、優れた人材の登用などという内容は、実はチームの生産性に無関係であり、唯一有意差を認めたのが「心理的安全性」の存在だった。心理的安全性という言葉は、ハーバード大学のエミー・エドモンドソンにより、爆発的に世界に広がったが、その概念の根幹は、「対人関係を損ねるかなと躊躇うような場面でも、事実に目を背けず、懸念が口にできるという概念がチームに共有されている状態、何か失敗しても、そのために罰せられたり評価が下ることはないと確信している状態、そして、助けや情報を求めても不快だと思われたり、無視されたり、恥をかかされたりしないと思える状態」を指。これは医療安全の根幹と完全に符合する。そして、リーダーの包摂性(leader inclusiveness)、心理的安全性と組織における関係について、米国とカナダのNICU(新生児集中治療室)に勤務する医療従事者1440名によるアンケート回答結果を分析し報告している。その中で、リーダーの包摂性はメンバーの心理的安全性と正の相関があり、組織の多様性が生産性と正の相関を示すためには、チームに於ける心理的安全性の存在が必要だった。本発表では、小児循環器診療における心理的安全性の医療チーム、医療安全に及ぼす意義を考えてみたい。