第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

学校保健・疫学・心血管危険因子

一般口演23(III-OR23)
学校保健・疫学・心血管危険因子

2024年7月13日(土) 09:00 〜 10:00 第6会場 (4F 401-403)

座長:手島 秀剛(市立大村市民病院 小児科)
座長:桃井 伸緒(福島県立医科大学周産期小児支援講座)

[III-OR23-03] フォンタン術後小児患者における貧血を伴わない鉄欠乏状態の有病率に関する検討

林 知洸1, 野崎 良寛1, 矢野 悠介1, 石踊 巧1, 村上 卓1,2, 高田 英俊1,2 (1.筑波大学附属病院 小児科, 2.筑波大学 医学医療系 小児科)

キーワード:鉄欠乏, 心不全, フォンタン術後

【背景】成人の慢性心不全管理において鉄欠乏状態(iron deficiency:ID)は貧血を伴わずとも予後に関与することが知られており、貧血を伴わない鉄欠乏状態(iron deficiency without anemia: IDWA)として注目されている。鉄欠乏状態の評価にはtransferrin saturation (TSAT)[TSAT=(血清鉄/総鉄結合能)×100](%)が用いられる。小児ではTSAT<16%で貧血を伴わないものをIDWAとし、IDWAが精神運動発達や運動機能に関与することが知られているが、心疾患におけるIDWAの影響や有病率を検討した報告はない。【目的】最重症の心不全患者群であるTCPC後の患者におけるIDWAの有病率を明らかにする。【方法】当院外来通院中の18歳以下のTCPC後の患者のうち、鉄動態の評価が行われている39例について後方視的検討を行った。血算、血清鉄、フェリチン、TIBC、UIBC、BNP、SpO2について同時に評価されている直近の検査値を収集した。結果は主に中央値[25%値, 75%値]で示す。TSAT<16 %を鉄欠乏状態とし、血色素量が年齢の基準値を下回るものを貧血とした。BNP値をマン・ホイットニーU検定で比較した。有意水準は0.05とした。【結果】男児28例、年齢中央値8.7[5.4-13.2]歳、SpO2 92[90-95]%、血色素量 13.5[13.05-15.1]g、TSAT 19.3[12.9-28.9]%、BNP 10.8[6.4-33.7]pg/mLだった。IDは33.3%(13/39例)に認め、そのうち貧血は2.6 %(1/39例)であり、IDWAは30.8 %(12/39例)だった。BNP値はID群と非ID群それぞれで26.6 [8.8-40.5] pg/mL、 9.95 [6.15-26.2] pg/mLで有意差はなかった(p=0.175)。【考察】健常小児におけるIDWAの有病率は7-9 %程度とされており、TCPC後の患者では有病率が高かった。IDの有無でBNP値に有意な差はなかったが今後患者数を増やして検討することが必要と考えられた。また、TCPC後の患者以外を含めた小児の心疾患患者におけるIDの有病率や予後との関連についてさらなる検討が必要である。