[III-OR27-03] 当院における血管型エーラスダン・ロス症候群の小児期循環管理について
キーワード:エーラス・ダンロス症候群, 結合組織, セリプロロール
【背景・目的】エーラス・ダンロス症候群(EDS)は皮膚、血管、腱・靭帯などコラーゲン分子の生成・代謝の先天的異常により全身結合組織の脆弱性を特徴とする遺伝性結合組織異常である。中でもIII型コラーゲンをコードするCOL3A1遺伝子の変異により発症する血管型は他の病型を比較して予後不良であり、大動脈解離や動脈破裂のみならず気胸や消化管穿孔、妊婦の子宮破裂などを合併する。心血管系の合併症予防にセリプロロールの有効性が報告され早期診断・早期介入が重要であり当院では各科と連携し小児期より積極的介入を行なっている。血管型EDS患児管理の一助となると考え当院での循環管理を中心に報告する。【対象と方法】2013年以降当科を受診し確定診断された7家系8名を対象とし診療録から後方視的に情報を収集し解析した。【結果】8名のうち家族歴を有する症例は7名、発端者は1名で、男児4名、患児居住地は県内が2名、県外が6名であった。診断時年齢の中央値8歳(0-12歳)、観察期間の中央値1613日(182-3493日)であった。合併症を認めた症例は気胸が3例、左膝靭帯損傷1例、鼠径ヘルニア1例であった。7症例でセリプロロールの内服が開始され開始時年齢の中央値9歳(7-12歳)で特に有害事象なく継続中である。初診時の心エコーによるバルサルバ洞径のz score中央値 +0.3(-1.3-+1.3)、最終受診時のz score中央値 +0.3(-1.3-+1.3)と観察期間中に拡張進行は認めなかった。就学児については運動制限も実施しコンタクトスポーツなどについては特に注意して指導している。全ての症例で居住地域の医療機関と積極に連携を図り合併症発生時の対応や処方など日々の管理を協調している。【考察】当院では遺伝子解析を積極的に行いセリプロロールの導入を進め、小児期より循環管理を行うことで現時点での心血管系合併症の発症は認めていない。また適切な運動管理をすることで他の合併症のリスクも下げると考える。