[III-P01-1-07] 小児心疾患に合併した血栓症に対しtissue plasminogen activator低用量・長時間投与法を施行した2例
キーワード:血栓溶解療法, tissue plasminogen activator, 低用量・長時間
【背景】小児循環器診療では時に重篤な血栓合併症を経験する。血栓溶解療法が必要となる症例ではrecombinant tissue plasminogen activator(rt-PA)も選択肢となる。重篤な血栓症でありながらもバイタルサインが安定している症例においてrt-PAの低用量・長時間投与法を行った2例を経験したので報告する。【症例1】9か月男児。生後6か月時に乳児特発性僧帽弁腱索断裂のため僧帽弁置換術施行。ワーファリンコントロールに難渋。術後3か月の透視で機械弁の一葉が閉鎖位固定となった。血栓性の閉塞と判断し、血栓溶解療法を選択。循環不全は軽度でありヘパリン併用下でrt-PA(アルテプラーゼ)0.1mg/kg/hの持続投与を64時間行い、機械弁の可動性が回復した。しかし、rt-PA終了3週間後に再度機械弁が閉鎖位固定となり、同様の治療を42時間施行し可動性は回復した。重篤な出血性合併症は認めなかった。【症例2】1歳8か月男児。生後6か月時に川崎病に罹患し巨大冠動脈瘤を発症、以後アスピリン・ジピリダモール・ワーファリンを内服し、定期的にカテーテル検査にて同病変をフォローしていた。今回カテーテル検査後に穿刺部仮性動脈瘤を発症、メナテトレノン、人プロトロンビン複合体製剤の投与および長時間の圧迫を行い仮性瘤内部の血栓化及び止血を得た。しかし、止血14日目にエコーおよび造影CTにて冠動脈瘤内部の血栓形成が判明し、ヘパリン併用下でrt-PA(アルテプラーゼ)0.07mg/kg/hの持続投与を96時間施行し、冠動脈瘤内の血栓はわずかずつ縮小した。rt-PA終了後はヘパリン、ワーファリン投与を継続して行い、rt-PA投与開始20日目のエコーでは血栓が消失した。経過中仮性動脈瘤への血流の再開通は認めず、そのほかの重篤な出血性合併症も認めなかった【考察】rt-PAの低用量・長時間投与法を2例の患者に施行し、重篤な合併症なく良好な転帰を得た。症例によっては低用量・長時間投与法は有用な治療選択肢となる。