第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

心不全・心移植

ポスター発表(III-P01-2)
心不全・心移植

2024年7月13日(土) 09:00 〜 10:00 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:篠原 徳子

[III-P01-2-04] イバブラジンにより左室収縮能が改善したフォンタン術後三尖弁閉鎖の1例

神田 藍, 佐藤 智幸, 五味 遥, 森田 裕介, 古井 貞浩, 横溝 亜希子, 岡 健介, 関 満, 田島 敏弘 (自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児科)

キーワード:イバブラジン, HFrEF, フォンタン

【背景】収縮能の低下した心不全(HFrEF)に対する治療はACE阻害薬やβ遮断薬などの標準的治療に加え、ARNI、SGLT2阻害薬、イバブラジンなどの新規心不全治療薬が使用されるようになった。しかし、これらは主に成人の臨床試験やガイドラインでその有効性が示されており、小児や先天性心疾患に対する使用経験や有効性を示した報告は少ない。今回、洞性頻脈が持続するフォタン術後三尖弁閉鎖のHFrEF症例に対しイバブラジンを導入し、左室収縮能の改善を得た1例を経験した。
【症例】11歳女子、体重 26kg。三尖弁閉鎖(1c)に対し、4歳時にFontan手術(開窓なし)を施行された。術直後の左室機能はLVEF56%と保たれFontan循環も良好だったが、術後1年にはLVEF47%、術後2年にはLVEF37%と経時的に左室収縮能は低下した。また、安静時心拍は120bpm程度の洞性頻脈の状態であった。エナラプリルとカルベジロールを漸次導入し、それぞれ0.2mg/kg/日、0.4mg/kg/日まで増量した。しかし、左室収縮能、洞性頻脈ともに改善が得られず、イバブラジンを導入する方針とした。イバブラジンは院内の適応外使用審査の承認を得て、入院の上導入した。導入前の評価では、心エコー、MRIともにLVEF31%、安静時心拍は106bpmであった。イバブラジンは安静時心拍20%減を目標に、2.5mg/日で導入し14日後に5mg/日に増量、有害事象のないことを確認し退院した。イバブラジン導入2か月後の心エコーではLVEFは45%、安静時心拍は87bpmと左室収縮能、洞性頻脈ともに改善傾向となった。
【考察】イバブラジンはβ遮断薬を含む標準的な心不全治療を受けているにも関わらず、洞調律かつ安静時心拍が75bpm以上のHFrEF患者に有効とされている。小児はもともと心拍が早く、先天性心疾患に対する使用経験も乏しいため適応症例の選択に悩むところではあるが、小児やフォンタン術後でも心拍の早いHFrEF患者に対しイバブラジンが有効である可能性が示唆された。