[III-P01-2-05] Mitral valve replacement for functional mitral regurgitation associated with dilated cardiomyopathy in a 5-year-old boy
Keywords:拡張型心筋症, 重症心不全, 僧帽弁置換
【背景】拡張型心筋症(DCM)における重度の機能性僧帽弁閉鎖不全(FMR:functional mitral regurgitation)は、独立した予後規定因子と言われている。FMRに対する外科的介入の小児報告例は少なく、予後も不明である。今回我々はDCMにおいてFMRが進行し、血行動態が破綻した幼児例に対して、僧帽弁置換術(MVR)を施行し、心不全症状が改善した症例を経験したので報告する。【症例】5歳男児。新生児期にDCMと診断、内科的治療により生後3カ月で自宅退院できたが、成長とともにFMRが悪化した。5歳時にFMRが重度となり、心不全症状の悪化を認め、入院加療を行ったが、カテコラミン、人工呼吸管理を離脱できず、心室頻拍のコントロールがつかないためMVRを施行。術後19日目にICU退室。術後3カ月、左室駆出率(LVEF)34%と収縮能の改善はないが、心不全症状は改善し、不整脈の再燃もなく自宅退院できた。現在術後1年が経過し、人工弁の合併症なく外来管理中である。【考察】左室全体が高度に拡張する重症DCMにおいて、テザリングによるFMRは血行動態を破綻させる原因となりうる。成人では僧帽弁の外科的介入は選択肢の一つとして議論されているが、小児では症例自体が少なく、患者・疾患背景も大きく異なるため、一般的ではない。本症例は、十分な内科治療を行っても心不全および不整脈のコントロールが困難であったこと、LVEF>30%と収縮能は比較的保たれていたことを踏まえてMVRを施行し、全身状態を改善させることができた。今後、小児の重症FMRに対しても、移植回避できる治療選択肢の一つとして僧帽弁への外科的介入は検討すべきと考えるが、術式の選択、低心機能に対するMVRの是非、本質的な疾患の治療ではないことなど今後の課題は多い。【結語】重度のFMRを合併したDCM幼児例に対し、MVRを施行し、心不全症状が改善した症例を経験したが、適応となる対象や介入のタイミングに関して、今後の症例の蓄積が必要である。