[III-P01-2-06] 乳児拡張型心筋症に対する肺動脈絞扼術の効果~2症例を経験して~
キーワード:拡張型心筋症, 肺動脈絞扼術, 重症心不全
【背景】乳児期発症の拡張型心筋症(DCM)は生命予後不良な疾患であり,薬物治療抵抗性の場合は心臓移植が唯一の救命手段となる.国外では肺動脈絞扼術(PAB)後に心機能の改善や心室補助装置(VAD)導入時期を延期させる効果があるとの多くの報告がある。しかし国内での報告は少ない.【目的】乳児期発症のDCMに対して,PABを実施した2症例を報告する.【症例1】PAB時7カ月,5.1kg(-3.4SD).在胎37週1日,2130gで出生し,2ヶ月時に心不全を発症した.心筋生検を行い拡張型心筋症と診断し、薬物治療抵抗性であった。家族は心臓移植を希望せず,PABを実施した.中心静脈圧は6から9 mmHg,左房圧は15から10 mmHg,右室/左室圧比は0.28から0.82となったが,血圧の低下と右心不全のため絞扼の調整を要した.術後肺うっ血は軽快したがLVEFは改善なく経過し,静注強心薬は中止できなかった.経過中に心臓移植を希望されたため,1歳9か月時(5.5kg)に左室補助装置(LVAD)を装着し,装着772日に心臓移植を行った.【症例2】PAB時1カ月,4.6kg, 在胎30週,3740gで出生した.1ヶ月時に心不全を発症し, 薬物治療抵抗性であったため当院転院となった.5kg未満のVAD装着は合併症リスクが高いとの報告があり,PABを実施する方針とした.中心静脈圧は9から10mmHg,左房圧は21から16mmHg,右室/左室圧比は0.63から0.73となった.術後18日に抜管し,現在は,PDE3阻害薬を使用下にドブタミンの減量とACE阻害薬およびβ遮断薬を導入している.【考察】1例目では設定不良で術後右心不全を呈した.強すぎる絞扼を避けることにより右心不全は回避できた可能性がある.【結語】肺動脈絞扼術により心不全症状の進行を抑制した2症例を経験した.肺動脈絞扼術は一部の重症心不全症例に対してbridge to recoveryやbridge to decisionにつながる可能性がある.