[III-P01-2-07] 進行心不全に対する緩和的オルプリノンの有効性評価
キーワード:心不全, PDE3阻害薬, オルプリノン
背景と目的: 持続的強心療法は, その使用を支持する限られたエビデンスにもかかわらず, 最終治療への橋渡しとして, あるいは生活の質を改善する手段として, 進行した心不全 (HF) 患者に適用されている. ホスホジエステラーゼ3阻害薬であるオルプリノンは, β遮断薬による交感神経受容体抑制下でも優れた心陽性変力作用と血管拡張作用を有する. 本研究は, オルプリノン治療を受けた少人数の進行HF患者の効果を評価することを目的とした.方法と結果: 本研究は, 持続的オルプリノン静注を連続して1年以上施行された進行HF患者を対象とした単施設症例集積研究である. 全ての患者は左室駆出率が40%未満で, B-ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント (NTproBNP) が上昇し, ガイドラインで指示された最大限の薬物療法にもかかわらずニューヨーク心臓協会クラスIII-IVであった. 患者はNTproBNP値, 心エコー, Framingham基準を用いてオルプリノン持続静注の投与前と投与1年後に評価された. コホートには3例が含まれ, 2例が男性で, 年齢は中央値15歳であった. 1年間のオルプリノン投与後, NTproBNP値は中央値1015pg/mLから719pg/mLに減少した. Framingham基準で評価したうっ血性HF症状は, 中央値4項目から2項目に改善した. 最終的にオルプリノン持続静注開始後の中央値2.6年(治療実施期間中央値84%)で全例がHF死に至ったが, NTproBNP値, うっ血性HF症状はそれぞれ中央値3.5年, 2.5年の期間で治療改善時より低下していた.結論: 進行HF患者を対象としたこの小規模試験では,オルプリノン持続静注開始後, NTproBNP値, うっ血性心不全症状の改善が死亡の直前まで観察された. オルプリノン持続静注は, 進行HF患者の心負荷及び生活の質の限定的改善に有用である可能性が示唆された.