[III-P01-2-10] トルバプタンの利尿効果判定における随意尿中AVP/Cr濃度の意義
キーワード:トルバプタン, レスポンダー, AVP
【背景】トルバプタンのレスポンダー/ノンレスポンダー(R/NR)を予測する基準に、(1) 尿浸透圧>352mOsm/L、(2) 尿浸透圧の低下率>26%がある。しかし、尿浸透圧は多因子の影響を受け、投与前後の尿中AVP/Cr濃度比(A/C前後比)の方が、より臨床効果を反映することを以前報告した。静注薬であるサムタスが登場したため、このマーカーの特性と有用性をさらに検討した。【目的】サムスカとサムタスの効果におけるA/C前後比の意義を比較検討する。【対象】生後2か月~76歳の先天性心疾患及び拡張型心筋症の患者13名。【方法】Rの定義は1日尿量が開始前よりも増えていることとした。A/C前後比をサムスカ(投与前と6時間後)とサムタス(投与前と1,2,4,6時間後)で測定した。R/NRに関してA/C前後比のカットオフ値をROC解析から求め、浸透圧を用いた基準と比較検討した。【結果】R/NRに関するA/C前後比のカットオフ値は、サムスカ6時間値で1.1であり、感度0.86、特異度0.81(AUC0.874、95%信頼区間0.75-1.0)となり、多変量ROC解析で浸透圧の基準より有意に有用であった(p=0.04)。サムタス1時間のA/C前後比はカットオフ値1.0で感度0.67、特異度1.0(AUC0.8、95%信頼区間0.595-1)、4時間のA/C前後比はカットオフ値1.7で感度0.71、特異度1.0(AUC0.81、95%信頼区間0.593-1)となった。2時間、6時間では有意差はなかった。いずれも陽性的中率は高く、0.75-1.0だった。【考察】各時間で設定したカットオフ値を用いるとA/C前後比は、従来の浸透圧の基準と比較してより臨床効果を反映し、特に特異度と陽性的中率が高い。このマーカーの有用な時間帯はサムスカは内服6時間後、サムタスは静注1時間後である。サムタスは静注薬で、より早い利尿作用が得られるため、効果判定は6時間まで待たずに1時間で行うべきである。