[III-P01-4-02] 口腔環境が良好な健常女児に発症したStreptococcus mitisによる感染性心内膜炎の1例
キーワード:感染性心内膜炎, 大動脈弁逆流症, 不明熱
【諸言】小児感染性心内膜炎(IE:infective endocarditis)のリスク因子として、先天性心疾患や術後の血行動態異常、人工物の存在が挙げられる。一方、基礎疾患のない小児IEも10%程度存在するとされ、診断までに時間を要することが多く、弁逆流や心不全、塞栓症などの合併症の発症率が高くなる。今回、基礎疾患のない小児IE女児例を経験したので報告する。【症例】2歳女児。全身状態は良好であったが、間欠熱が3週間持続したため、精査目的に紹介となった。心エコーで大動脈弁に疣腫を認め、血液培養よりStreptococcus mitisを検出し、IEと診断した。弁尖破壊による中等度の大動脈弁逆流を合併していた。口腔衛生状態は良好で、抜歯や歯科治療歴もなく、侵入門戸は不明であった。心不全症状や塞栓症の合併はなく、抗菌薬治療で疣腫は退縮したが、大動脈弁逆流の改善はなかった。心臓MRI検査、カテーテル検査での逆流率はそれぞれ32%、45%で、易疲労性ありIE発症から1年後にRoss手術に至った。【考察】Linらは基礎疾患のない小児IEは、先天性心疾患児と比較して発症年齢が高く(6.8歳 vs 17.3歳)、診断までに時間を要し(18日 vs 31日)、外科的介入が必要となることが多い(29% vs 73%)と報告している。また、同報告では基礎疾患のない小児IE11例のうち、3例で口腔内連鎖球菌を検出しているが、いずれも口腔内に問題なく、歯科治療歴がなかった。【結語】基礎疾患・リスク因子のない、口腔環境が良好な2歳女児に発症したIE例を経験した。弁尖破壊により中等度の大動脈弁逆流が残存し、Ross手術に至った。早期診断、治療介入が重要であり、基礎疾患に関わらず、原因不明の発熱が持続する場合にはIEの鑑別が必要である。