[III-P01-4-04] 肺静脈狭窄における内膜肥厚に関与する細胞外マトリックスの検討
キーワード:肺静脈狭窄症, 内膜肥厚, 細胞外マトリックス
【背景】肺静脈狭窄症(PVO)は,Sutureless法といった手術法やカテーテル治療の導入,薬剤溶解ステントなどにより治療成績の向上が認められているが,術後再狭窄は50~60%ほどに認められ,さらなる治療法開発が望まれている.病理学的検討は少数例の報告に限られ,肺静脈において内膜肥厚が形成される機序は解明されていない.
【目的】肺静脈狭窄症における内膜肥厚に関与する分子を病理組織から検討すること.
【方法】2014年4月から2024年1月までに静岡県立こども病院にてPVOに対し外科的修復術を施行した11症例(TAPVC修復術後PVO 5例,PVO修復術後PVO 4例,その他先天性心疾患に合併したPVO 2例;組織採取時平均月齢24.6カ月)において術中採取された心房を含む肺静脈組織を解析した.Alcian Blue(AB),Elastica Masson Goldner(EMG)およびヒアルロン酸結合タンパクの染色と,免疫組織染色(増殖細胞核抗原(PCNA),cleaved versican,ADAMTS5)を行い,発現量をImageJにより定量し,部位間の発現比較をMann-Whitney検定を用いて解析した.
【結果】PVO組織の細胞性領域と線維性領域はそれぞれ内膜肥厚の進行過程と陳旧化を反映した部分であると考え,EMG染色と免疫組織染色により,弾性線維形成が高度かつPCNA陽性細胞比率が低い(10%以下)部位を線維性領域として,PCNA陽性細胞比率が高く(30%以上)細胞性増殖が亢進している部位を細胞性領域として分類した.AB染色により両領域ともグリコサミノグリカンが高発現していた.このうちヒアルロン酸は線維性領域と比べて細胞性領域に多く発現していた(2.2±0.3倍, p <0.05).cleaved versicanとversicanの切断酵素ADAMTS5は細胞性領域と比べて線維性領域に多く発現していた(5.1±1.0倍,3.5±0.5倍,p<0.05).
【結論】ヒアルロン酸は内膜肥厚形成における細胞増殖に関与し,AMTS5とそれにより切断されたversican fragmentは内膜肥厚の陳旧化に関与する可能性が示唆された.
【目的】肺静脈狭窄症における内膜肥厚に関与する分子を病理組織から検討すること.
【方法】2014年4月から2024年1月までに静岡県立こども病院にてPVOに対し外科的修復術を施行した11症例(TAPVC修復術後PVO 5例,PVO修復術後PVO 4例,その他先天性心疾患に合併したPVO 2例;組織採取時平均月齢24.6カ月)において術中採取された心房を含む肺静脈組織を解析した.Alcian Blue(AB),Elastica Masson Goldner(EMG)およびヒアルロン酸結合タンパクの染色と,免疫組織染色(増殖細胞核抗原(PCNA),cleaved versican,ADAMTS5)を行い,発現量をImageJにより定量し,部位間の発現比較をMann-Whitney検定を用いて解析した.
【結果】PVO組織の細胞性領域と線維性領域はそれぞれ内膜肥厚の進行過程と陳旧化を反映した部分であると考え,EMG染色と免疫組織染色により,弾性線維形成が高度かつPCNA陽性細胞比率が低い(10%以下)部位を線維性領域として,PCNA陽性細胞比率が高く(30%以上)細胞性増殖が亢進している部位を細胞性領域として分類した.AB染色により両領域ともグリコサミノグリカンが高発現していた.このうちヒアルロン酸は線維性領域と比べて細胞性領域に多く発現していた(2.2±0.3倍, p <0.05).cleaved versicanとversicanの切断酵素ADAMTS5は細胞性領域と比べて線維性領域に多く発現していた(5.1±1.0倍,3.5±0.5倍,p<0.05).
【結論】ヒアルロン酸は内膜肥厚形成における細胞増殖に関与し,AMTS5とそれにより切断されたversican fragmentは内膜肥厚の陳旧化に関与する可能性が示唆された.