[III-P02-1-03] Bacterial translocationから敗血症を繰り返すフォンタン術後出血性蛋白漏出性胃腸症の1例
キーワード:出血性PLE, フォンタン術後, bacterial translocation
【背景】フォンタン術後に蛋白漏出性胃腸症(PLE)と消化管出血を来たす例は稀だが複数の報告があり、消化管出血はPLEの一臨床像とされている。また持続する腸管の炎症は腸上皮のバリア機能を低下させ、bacterial translocationを引き起こす可能性がある。【症例】16歳男性。診断はPAIVS。1歳時にグレン手術施行も術後乳糜胸水で治療難渋、脳梗塞の合併あり。3歳時にSVC(13)、PA index 147でフォンタン手術を施行し、術後乳糜胸水で治療に難渋した。術後のカテーテル検査でCVPは(11)。4歳時に両側総腸骨静脈閉塞が発覚。6歳時に感冒を契機にPLEを発症。安静、ヘパリン療法、スピロノラクトン大量療法、脂肪制限食で寛解したが、その後も再発を繰り返した。10歳頃、PLEの寛解中に大腿・下腹部や陰嚢の浮腫が目立ちリンパ浮腫が疑われた。13-14歳時に黒色便、Albの低下を伴う貧血の進行あり。内視鏡検査で十二指腸・小腸の出血とリンパ管拡張を認め、出血性PLEと診断。カテーテル検査ではCVP(14)、CI 2.5、Qp/Qs 0.64、SVR 17.1、PAR 4.1であった。14歳頃より大腿・下腹部浮腫増悪時に腸内細菌による菌血症を複数回認めた。PLE、消化管出血に対しミドドリン療法、オクトレオチド皮下注、漢方薬等を導入するも寛解は得られず、消化管出血は持続。大腿のリンパ浮腫にリンパ管静脈吻合術を行い吻合箇所の浮腫は軽減。繰り返す菌血症に対して抗菌薬予防内服(ホスホマイシン・ST合剤)を開始後、再発なく経過した。現在出血性PLEは持続し定期的な補充を要している。【考察】フォンタン術後の出血性PLEは難治性であり、血管焼灼術やオクトレオチド、ステロイド投与などで寛解に至った報告があるが、本症例ではステロイドは感染の為使用しづらく、他の治療でも効果は得られなかった。また、繰り返す敗血症は出血性PLEにより腸上皮のバリア機能が低下し、bacterial translocationを起こしたと考えられ、抗菌薬予防内服が効果的であった。