[III-P02-1-04] Fontan術後の蛋白漏出性胃腸症に対して肺血管拡張薬を併用した経口ブデゾニドの効果
キーワード:Fonatn, Budesonide, PLE
背景:Fontan術後蛋白漏出性胃腸症(PLE)は,静脈うっ血に起因するフォンタン不全徴候の一つであり, 予後不良因子である.全身性ステロイド投与と比較し,経口ブデゾニドは比較的局所での効果が期待できるために副作用が少ないと考えられ,近年のメタアナリシスでもそのアルブミン(Alb)低下予防効果が明らかにされている.一方,海外と比較し肺血管拡張薬を併用した治療が多いことが本邦の特徴であるが,その併用効果は不明である.対照的な2症例の臨床経過から薬剤の適応を考察した. 症例1:11歳男児.左心低形成症候群に対し2歳時にFontan手術を施行したが,術後1年でPLEを発症した.ヘパリン持続静注,ステロイド投与で低蛋白血症は改善し,ステロイド内服継続で退院した.ステロイド全身投与による弊害を懸念し8歳頃よりステロイド漸減開始し,1年程度で中止とした.しかし,明らかな浮腫は無いものの中止後からPLEが再燃し,利尿薬や肺血管拡張薬の増量でも改善なく,ブデゾニドの導入を行った.ブデゾニド投与前はAlb 1.7 g/dLであったが,Alb 2.4 g/dLと改善傾向に至るのに約2か月を要した.症例2:13歳女児.右室型単心室に対し2歳時にFontan手術を施行し,CVP11mmHgと安定した経過であった.朝の浮腫みが気になりだしてから約1年の経過で緩徐にAlb低下し, 11歳時にPLEと診断した.CVPは11mmHgで血行動態的には発症前と著変なく,利尿薬の調整と肺血管拡張薬導入ではPLEの改善を得られなかったため,ブデゾニドを導入した.ブデゾニド投与前はAlb 2.6g/dLであったが,約1か月でAlb 4.6g/dLと急速に上昇した.考察: 症例2は症例1と比較し, 朝だけであるが明らかに浮腫を認めたこと, 発症から介入までの期間が短かったことが大きく異なる. 症例1は全身投与により長期間安定が得られていたことから, 顕著な漏出から介入までの期間は必ずしも長くなかった可能性がある.