[III-P02-2-07] Impact of revised guidelines for pulmonary hypertension on congenital heart disease practice
Keywords:肺高血圧, 平均肺動脈圧, 肺血管拡張薬
【背景】2022年の欧州心臓病学会(ESC)と欧州呼吸器学会(ERS)による、肺高血圧症の診断と治療ガイドライン(ESC/ERSガイドライン2022)改訂により、肺高血圧症の定義は従来の「平均肺動脈圧(mPAP)が25mmHg以上」から、「mPAPが20mmHgを上回る場合」に変更された。本研究は先天性心疾患診療において、mPAP 21~24mmHgを新たに肺高血圧症に加えることの妥当性を検証することを目的とする。【方法】2020年1月から2021年12月までに、北里大学病院にて先天性心疾患に対する心臓カテーテル検査を行った症例を対象として、血行動態評価、臨床経過および予後を後方視的に検討した。なお観察期間は2022年12月までとした。【結果】二心室修復術前または術後評価として、心臓カテーテル検査でmPAPが測定できた79例(平均年齢3.6±5.0歳)を研究対象とした。mPAPが21~24mmHgであったのは10例(平均年齢1.4±2.4歳)で、心疾患は心室中隔欠損が4例で最多であった。mPAPが21~24mmHgの群は平均肺血管抵抗係数(PRVI) 2.5±2.2WU・m 2、肺体血流比(Qp/Qs) 1.8±0.7で、心臓カテーテル検査後に二心室修復を行った症例で、術後に肺血管拡張薬の新規導入を要したものは2例であった。mPAPが25mmHg以上であった群(n=23、平均年齢1.2±3.2歳)は、PVRI 2.5±1.1WU・m 2、Qp/Qs 3.0±1.1で、二心室修復術後に肺血管拡張薬を新規導入した症例は3例であった。mPAPが20mmHg以下の群で術後に肺血管拡張薬を導入した症例はいなかった。【結語】従来の定義では肺高血圧症と診断されなかった群でも、肺高血圧治療を要する症例が存在することが明らかになった。新しい肺高血圧症の定義を適用することにより、適切な治療対象の選別および介入ができる可能性が示唆された。