[III-P02-2-09] A girl with heritable pulmonary arterial hypertension who experienced a marked improvement in pulmonary hypertension - after respiratory infection
Keywords:遺伝性肺動脈性肺高血圧症, BMP9, 肺炎
【症例】16歳女性
【現病歴】失神、歩行時呼吸困難を契機に11歳時に遺伝性肺動脈性肺高血圧症(BMP9のナンセンス変異)と診断された。診断時、体血圧を凌駕する肺動脈圧(平均肺動脈圧mPAP 72mmHg)、高度の肺血管抵抗係数上昇(29.6 WU・m2)、低心拍出(心係数CI 2.0 L/min/m2)を認め、内服標的治療薬3剤(macitentan、riocigat、selexipag)による標的治療薬を開始し、診断後3ヶ月時にはepoprostenolを導入(selexipagから変更)した。治療開始後2年時にはmPAP 51mmHg、PVRI 10.1 WU・m2まで改善したが、その後は増悪傾向となり治療開始後約4年時点ではmPAP 65mmHg、PVRI 18.3 WU・m2であった。治療開始後4年時のカテーテル検査以降、呼吸困難も目立つようになり、心嚢水貯留、右房・右室の著明な拡張、BNPの上昇(200pg/mL台で推移)も加わったため肺移植登録の準備を開始した。その状態下で治療開始5年時に咳嗽・発熱・CRP上昇(15mg/dL)を認め、入院の上で抗生剤治療を開始した。有意な肺炎像はなく血液培養は陰性で、Film Alleyでも原因病原体の同定にはいたらなかった。抗生剤の効果は乏しく発熱は14日間持続したが、その間の循環や呼吸状態は安定していた。持続する咳嗽に対しては喘息に準じた治療(ロイコトリエン拮抗薬、ステロイド投与3日間)も行ったが効果は乏しかった。発熱後1か月時の心エコーで右室圧の著明な低下と右心系拡大の著明な改善を認め、発熱後3ヶ月時のカテーテル検査ではmPAP 24 mmHg、PVRI 4.1 WU・m2へ低下していた。その後の再増悪も懸念されたが1年が経過しても明らかな肺高血圧の再増悪はみられていない。
【考察】肺動脈圧が改善した理由は現時点で不明だが、本症例はBMP9遺伝子変異を有しており、何らかの要因でBMP9の下流に位置するsmad系が活性化された可能性が考えられる。
【結語】本症例の経過を追いながら肺高血圧改善の原因を追究していくことが,新たな病態解明や治療につながる可能性がある。
【現病歴】失神、歩行時呼吸困難を契機に11歳時に遺伝性肺動脈性肺高血圧症(BMP9のナンセンス変異)と診断された。診断時、体血圧を凌駕する肺動脈圧(平均肺動脈圧mPAP 72mmHg)、高度の肺血管抵抗係数上昇(29.6 WU・m2)、低心拍出(心係数CI 2.0 L/min/m2)を認め、内服標的治療薬3剤(macitentan、riocigat、selexipag)による標的治療薬を開始し、診断後3ヶ月時にはepoprostenolを導入(selexipagから変更)した。治療開始後2年時にはmPAP 51mmHg、PVRI 10.1 WU・m2まで改善したが、その後は増悪傾向となり治療開始後約4年時点ではmPAP 65mmHg、PVRI 18.3 WU・m2であった。治療開始後4年時のカテーテル検査以降、呼吸困難も目立つようになり、心嚢水貯留、右房・右室の著明な拡張、BNPの上昇(200pg/mL台で推移)も加わったため肺移植登録の準備を開始した。その状態下で治療開始5年時に咳嗽・発熱・CRP上昇(15mg/dL)を認め、入院の上で抗生剤治療を開始した。有意な肺炎像はなく血液培養は陰性で、Film Alleyでも原因病原体の同定にはいたらなかった。抗生剤の効果は乏しく発熱は14日間持続したが、その間の循環や呼吸状態は安定していた。持続する咳嗽に対しては喘息に準じた治療(ロイコトリエン拮抗薬、ステロイド投与3日間)も行ったが効果は乏しかった。発熱後1か月時の心エコーで右室圧の著明な低下と右心系拡大の著明な改善を認め、発熱後3ヶ月時のカテーテル検査ではmPAP 24 mmHg、PVRI 4.1 WU・m2へ低下していた。その後の再増悪も懸念されたが1年が経過しても明らかな肺高血圧の再増悪はみられていない。
【考察】肺動脈圧が改善した理由は現時点で不明だが、本症例はBMP9遺伝子変異を有しており、何らかの要因でBMP9の下流に位置するsmad系が活性化された可能性が考えられる。
【結語】本症例の経過を追いながら肺高血圧改善の原因を追究していくことが,新たな病態解明や治療につながる可能性がある。