[III-P02-4-06] 各先天性心疾患におけるPC法とFick法を用いた肺体血流評価の比較と使い分け
キーワード:PC法, Fick法, Qp/Qs
【背景】位相差コントラスト(PC法)とFick法によるQp、Qs評価が各先天性心疾患別にどのような相関関係にあるかは、まだ不明瞭である。【目的】PC法とFick法でのQp、Qsを比較し、疾患による傾向を検討する。【方法】当院において2019年1月から2023年12月までにMRIを行った患者で、カテーテル検査を12ヶ月以内に行った46症例(単心室例13例、ニ心室修復例23例、ニ心室心内シャント残存例10例)について後方視的に検討した。PC法におけるQpは肺静脈(Qpv)及び主肺動脈(Qpa)を、Qsは上大静脈+下大静脈(Qsv)及び上行大動脈(Qsa)をそれぞれ算出、比較した。Fick法でQpが計算不能な症例はQp比較対象から除外した。MRIでのQp/QsはQpv/Qsvとした。【結果】Fick法QpとPC法Qpv、Qpa、Fick法QsとPC法Qsv、Qsaは有意差を認めなかった。しかしQp/Qsでは有意差を認め(P=0.048)、とくにシャントがない二心室修復例では有意差がより顕著で(P=0.024)、Fick法でよりQp/Qsが高くなる傾向にあった。更に疾患別で検討するとMAPCA症例でFick法QpよりPC法Qpvが高く(4/6例)、Fick法QpとPC法Qpvの差(中央値-0.54、平均値-0.64)はFick法QpとPC法Qpaの差(中央値0.07、平均値-0.03)より大きい傾向にあった。TCPC症例(fenestration1/5例)ではFick法QsよりPC法Qsvは低くなる傾向にあった(4/5例)。Fick法とPC法Qsvの差とCVPとは優位な相関はなかった。【考察】当院では特に二心室例で肺静脈SaO2を左室流出路SaO2で代用することが多く、Qp/QsがFick法で高い要因と考える。MAPCA症例は遺残MAPCAによる肺血流量がFick法では過少評価されると考えられた。TCPC症例ではV-V collateralのためFick法QsよりPC法Qsvは低くなり、Fick法でQsが過大評価される可能性がある。【結論】特にMAPCAやTCPC症例ではFick法のみではQp、Qs評価が不十分である可能性があり、正確な評価にはPC法を併用することが望ましいと考える。