[III-P02-5-07] 食道裂孔ヘルニアを合併した右側相同への治療介入時期
キーワード:内臓錯位症候群, 無脾症候群, PVO
【背景】右側相同は消化器疾患を合併することがある.食道裂孔ヘルニアは胸腔内へ胃が滑脱し肺静脈を圧迫する可能性がある. 【目的】右側相同に合併した食道裂孔ヘルニアに対する治療介入時期を検討する.【対象】1993年1月から2024年2月までの31年間で,食道裂孔ヘルニアを合併した右側相同13例を対象とした. 【結果】男児7例,女児6例.生存11例,死亡2例.姑息術は外科的シャント術7例,肺動脈絞扼術4例,右室肺動脈導管1例. 11例でグレン手術, 8例でフォンタン手術を行った.食道裂孔ヘルニア根治術は9例で施行した.食道裂孔ヘルニアへの初回介入は生後108(1-266)日に行い,姑息術と同時が1例,姑息術後が6例,グレン手術後が2例であった.6例で胃瘻造設術を行い,全例閉鎖術を行った.胃瘻造設から閉鎖までは1331(798-2093)日であった.未介入,早期死亡を除いた11例全例で最終的に経口摂取が確立した.壊死性腸炎を2例,手術介入を要する腸閉塞を5例で合併した.肺静脈閉塞は6例10病変で認め,食道裂孔ヘルニア根治術前が4例4病変であった.1例は終末期のため介入せず,1例は待機中であり,4例8病変へ手術介入した.閉塞機序は内膜肥厚4病変,共通肺静脈腔と心房の吻合部狭窄3病変,気管による外圧迫1病変であった.胃の滑脱は左胸腔,右胸腔が3例ずつであったが,肺静脈閉塞部とヘルニア脱出側が一致したのは1例のみであった.その症例は5か月時に右室肺動脈導管を用いた姑息術を行い,現在1歳3か月である.新生児期に混合型の重度食道裂孔ヘルニアと診断されたが,全身状態が安定せず未介入である.胃が右胸腔へ脱出しているため右肺動脈血流が減少する可能性があり,さらに導管を介した肺動脈逆流が右肺動脈血流減少を助長し,右肺静脈閉塞を呈したと推察している.【結語】食道裂孔ヘルニアは肺静脈閉塞の原因となる可能性があるが,修復によりその影響を少なくできるかもしれない.