[III-P02-5-08] An elective cardiac surgery for TAPVR with bronchial stenosis
Keywords:総肺静脈還流異常症, 先天性気管狭窄症, 呼吸管理
【背景】先天性気管狭窄症は新生児・乳児期早期から症状を呈することが多く, 心疾患を合併する場合その周術期管理において大きな問題となる. 今回我々は気管狭窄を合併した総肺静脈還流異常症 (TAPVR) に対し, 関連診療科を交えた集学的な治療方針の検討を行いつつ, 待機的に心臓手術を実施し得た症例を経験した.【症例】症例は日齢0女児, 満期出生, 体重2,334g. 生直後より呻吟・チアノーゼを呈し, 近隣病院で挿管管理ののち当院へ搬送後, 先天性気管狭窄症とTAPVR (IIa), 左上大静脈遺残(PLSVC), 心房中隔欠損と診断した. 挿管チューブ先端より遠位に気管狭窄部があり容易に換気不全を呈したが, 日齢8に抜管し, 以降, 非侵襲的陽圧換気 (NPPV) で管理し得た. 心房間交通の狭小化や肺静脈狭窄はなく心疾患・呼吸器疾患ともに待機手術が可能と判断した. 待機期間中にPLSVCは右上大静脈 (RSVC) への迂回血流が発達し, 左上肢からの血流がほぼすべてRSVCに還流する血行動態へと変化, また気管狭窄部も少しずつ成長した. 生後3か月で体重増加不良となりTAPVR repairを実施, 手術にあたってはPLSVCを離断する術式を選択した. 術後は慎重に抜管し, NPPV補助下に一般病棟への退室が可能となった. その後体格成長とともに呼吸器症状の改善があり, 現時点では呼吸器疾患に対し外科的介入を避け, 成長発達を待つ方針となっている.【考察】気管狭窄を合併した先天性心疾患の診療においては, 心臓手術術後の気道浮腫など術侵襲自体も大きなリスクとなり, 手術の実施時期や気道管理の方法など十分な検討が必要となる. また術後に気道緊急となる可能性もあり, 科を超えた密なカンファレンスと治療方針の総意形成が重要である. 本患児は待機手術とすることでより低侵襲な術式が選択でき, 呼吸器疾患においてもより良い状態で周術期を乗り越えることができたと考えられる.